研究課題/領域番号 |
12J01583
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻本 陽子 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 粘土 / 非ニュートン流動 / 低せん断場 / 電気粘性効果 |
研究概要 |
本研究は、粘土粒子のせん断凝集のダイナミックスと懸濁液の流動特性との関係を体系的に関連づけ、粘土懸濁液の非ニュートン流動のメカニズム解明を目的としている。凝集状態の粘土を扱うにあたり、粘土粒子の分散・凝集挙動を支配している表面荷電特性とそれに基づく界面動電的な性質について調べていたところ、興味深い知見が得られた。粘土のミクロな界面動電的な性質はマクロな流動特性に影響を及ぼすため、非ニュートン流動のメカニズムを知る上で両者の関係は重要であると考えられる。そのため、初年度は両者の関係が顕著に現れ、電気二重層が十分に発達している低塩濃度領域での流動特性の研究に重きを置いた。 イオン強度の低下に伴い電気二重層が広がり、結果として粘度が増加する現象は電気粘性効果とよばれている。電気粘性効果が生じる要因として、電気二重層が厚くなり、有効半径が増大することが挙げられる。粘度測定の結果から、粘土(モンモリロナイト)懸濁液の粘度はイオン強度の低下に伴い増加し、電気粘性効果を確認した。また、電気粘性効果による粘度の増加は低せん断応力下ほど、顕著だった。これは、有効半径がせん断応力に依存しているためと考えられる。実験値から求めたモンモリロナイト粒子の有効半径はせん断応力に依存しており、定性的に理論と一致した。また、イオン強度が10^<-5>Mあるいは無塩系の場合、有効半径は1000nmに近い値を示した。これは粒子間距離に相当する長さであり、電気二重層の厚さよりもはるかに大きい。したがって、電気粘性効果によってもたらされる非ニュートン流動が、粘土粒子間に働く長距離相互作用によるものであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、凝集状態の粘土懸濁液の流動特性を研究する計画であったが、分散・凝集挙動を支配している粘土の界面動電的性質を明らかにしていくうちに、新たな知見が得られたため、ミクロな界面動電的性質とマクロな流動特性の関係について研究を重点的に行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は界面動電的な性質に起因する非ニュートン流動のメカニズムの研究に着目した。次年度は凝集メカニズムと流動性との関連性についての研究へ軌道修正を図る。まずは、粘土粒子をせん断凝集させ、かつ、凝集状態の粘土懸濁液の降伏値の測定を併せて行う。そのため、回転型粘度計を用いる予定である。これにより、せん断応力による凝集とそれに基づく流動性の変化を同時に追跡し、両者の関係性に基づき非ニュートン流動のメカニズム解明を目指す。 また、凝集による形態変化の評価手法として、初年度に習得した誘電分散の手法を取り入れることを検討している(Dielectric Coagumetry)。
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