研究課題/領域番号 |
12J01585
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 優多郎 九州大学, 大学院農学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ベプチド / 血管弛緩作用 / 抗炎症作用 / Ca^<2+>チャンネルブロック作用 |
研究概要 |
低分子ペプチド(Trp-His)による血管弛緩作用の発現には、カルモジュリン(CaM)シグナルを介したCa^<2+>関連収縮シグナル系の遮断が関わっている可能性を見出してきた。血圧関連臓器に局在するCaM-Ca^<2+>系を制御することにより、血管系疾患(動脈硬化症、心肥大、腎不全)を予防する可能性がある。さらに、CaM-Ca^<2+>系は炎症反応にも関与する報告があることから、Trp-Hisは血管だけではなく、他の臓器においても炎症反応を抑制することが期待される。そこで、今年度は、血管弛緩性ペプチドの抗炎症作用に関する詳細な知見の獲得を行った。 1. ペプチドの腸管炎症予防作用の実証(in vivo) ペプチドTrp-Hisを、腸炎症モデルマウス(デキストラン硫酸ナトリウム誘導性大腸炎マウス)に投与した結果、体重減少の抑制、クリニカルスコアの改善、大腸短小化の抑制が確認された。さらに、Trp-Hisは大腸における炎症性サイトカインの産生を抑制していた。これらのことより、ペプチドTrp-Hisは腸管炎症の予防作用を発現することを実証した。 2. ペプチドの腸管炎症予防作用のメカニズム解明(in vitro) ヒト腸上皮細胞株を用いて、Trp-Hisの抗炎症メカニズムの解明を試みた。サイトカイン(TNF-α)刺激により炎症反応を誘導した細胞において、Trp-Hisは炎症性サイトカインIL-8の産生を抑制することを明らかにした。これまでの研究成果であるTrp-HisのCa^<2+>チャンネルブロック作用に着目し、Ca^<2+>チャンネルアゴニストとの競合試験を実施した。その結果、アゴニスト共存下で、Trp-Hisの抗炎症作用は減弱した。このことから、Trp-Hisの抗炎症作用メカニズムの一つとして、Trp-HisのCa^<2+>チャンネルプロック作用が関与していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、University of Guelph (Canada)において、血管弛緩性ペプチドの抗炎症作用を動物試験で実証し、その作用機序を細胞レベルで解明した。よって、当初の研究実施計画をおおむね達成している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、血管をはじめとする血圧調節組織での生理機能を明示するために、活性ペプチドの構造要件、細胞内Ca^<2+>シグナル系抑制機構の網羅的解明を目的とした。低分子ペプチドの血管機能改善作用に着目し、今後も、細胞内Ca^(2+)調節ベプチドの構造要件および炎症刺激細胞内での生理作用の解明を引き続き進める予定である
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