研究概要 |
本研究では以下の2つの課題を行う. 1:姿勢の不安定化を示すパーキンソン病患者(PD患者)における間欠制御の崩壊が「すくみ足」(歩行開始の躊躇症状)の発生メカニズムの1つでもあるとの仮説を立て,歩行開始のごく初期段階における重心移動や足関節筋の筋活動計測を行い,この仮説の妥当性を検証する.このようなPD患者の「すくみ足」の発生メカニズムの探求と立位姿勢および歩行機能の定量化とそれに基づく定量診断アルゴリズムの開発を行う(国立病院機構刀根山病院との共同研究). 2:使用者の負担を軽減する省スペースかつ簡易に計測可能なマーカーレスモーションキャプチャシステムと床反力計を組み込んだ簡易型立位・歩行機能評価/リハビリ支援システムの開発を行う. 平成24年度は,1に関して,共同研究先である国立病院機構刀根山病院にてPD患者の静止立位および歩行開始における重心動揺や足関節筋の活動などの運動計測を行った.加えて所属研究室内でPD患者と同様の運動計測を健常者に対して行った.これらの計測によって得られた重心動揺データの時系列解析を行った.具体的には重心動揺パターンを特徴付ける指標を用いて評価した.その結果,健常者の重心動揺パターンには個人差が存在する可能性が示唆された.また先の研究で得られたPD患者と健常者の重心動揺パターンに違いが存在するという結果の妥当性を統計的検証した.2に関して,距離画像センサと簡易型床反力センサを用いてマーカレスモーションキャプチャを行うためのアルゴリズム構築を行った.具体的には,両者のセンサの経時的出力を標準的な身体パラメータを有するヒトの全身の剛体リンクモデル上に統合し,運動方程式に基づいて粗い距離画像データから力学的に妥当な姿勢を推定するアルゴリズムを構築した.1の研究成果について国内学会および国際学会にて報告した.
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今後の研究の推進方策 |
健常者とPD患者の重心動揺パターンをより詳細に分類することで,立位姿勢および歩行機能の定量化とそれに基づく定量診断アルゴリズムの開発を目指すが,そのためには重心動揺パターンの個人差を定量化する必要がある.そこで重心動揺パターンの個人差をよく表す指標を検討し,これらの指標と専門医による運動障害に関する診断結果を照らし合わせた上で,定量診断アルゴリズムの開発を行う.また開発中のマーカレスモーションキャプチャシステムの精度検証を所属研究室内の高精度光学式モーションキャプチャシステムを用いて行う.
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