研究課題/領域番号 |
12J01607
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
利川 潤 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 原始銀河団 / 銀河進化 / 大規模構造 / 初期宇宙 |
研究概要 |
本研究の目標は宇宙年齢が10億年にも届かない構造形成初期ににおける赤方偏移6の原始銀河団の観測を通して、次の2つのことを解明することである。1つ目は銀河進化と環境効果の関連性、つまり原始銀河団を構成する銀河とフィールドに存在する銀河との違いの起源について調べる。2つ目は宇宙の大規模構造、つまりどれほどの原始銀河団がいつ、どれくらい数が存在し、現在のものとどのように異なるのかについて調べることである。大規模構造との関連、銀河との関連、それぞれの観点から原始銀河団を研究することで、特に銀河団形成の初期段階について明らかにしたい。平成24年度ではすばる深宇宙探査領域において発見された赤方偏移6の最も遠い原始銀河団について、スピッツァー宇宙望遠鏡のIRACと呼ばれる観測装置によって取得されたデータを組み合わせることで、原始銀河団銀河の質量などの性質を調べた。その結果、近傍宇宙で見られるような銀河団銀河とフィールド銀河の違いは赤方偏移6の宇宙では見つけることができず、性質の違いの起源は先天的なものではなく、進化の過程の中で生じる後天的なものではないかと推測される。また、CFHTLSのアーカイブデータを用いて赤方偏移6の原始銀河団探査も行なっており、その中で発見された原始銀河団候補に対してすばる望遠鏡、Gemini望遠鏡を使い追観測を行った。この追観測から、2つの原始銀河団の存在を強く示唆する結果を得ることができた。4平方度という非常に広い領域を探査しており、赤方偏移6の原始銀河団の数密度について強い制限を加えることができ、宇宙の大規模構造の形成がどのように進んでいるのかを議論することができる。また多数の原始銀河団を発見することで、平均的な原始銀河団銀河の性質を調べることができる。次年度以降、新しく発見された原始銀河団に対しても様々な追観測を行い、原始銀河団銀河の性質を詳しく調べていく。また2つの国際研究会と1つの国内研究会に参加し、研究発表と議論を行なってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、平成24年度ではすばる深宇宙探査領域において発見されている赤方偏移6の原始銀河団の性質を更に詳しく調べるとともに、他の領域で赤方偏移6の原始銀河団の探査も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは新しく発見された原始銀河団候補に対して様々な観測を提案していき、銀河の性質をより詳しく調べていく。 赤方偏移6の原始銀河団はまだ1つしか見つかっていないため、この研究により初めて平均的な銀河の性質を調べることができる。銀河の性質を詳しく調べるとともに、すばる望遠鏡の新しい観測装置などを使うことにより、さらに原始銀河団探査を進める。広い領域を調べることで銀河の性質のみならず、宇宙の大規模構造についても調べていくことが出来る。
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