本研究では次世代宇宙推進システムである磁気セイル・磁気プラズマセイルの推力特性を明らかにし、さらなる推力向上を図ることを目的としている。磁気セイルは太陽から流れ道す高速のプラズマ流である太陽風を衛星から発生させた磁場で推力へ変換し、磁気プラズマセイルでは少量のプラズマ噴射によって磁場を拡大することによってさらに大きな椎力を得ることを目指している。まず、3次元のFull-PICシミュレーションを京コンピュータ(若手人材育成課題hp120084)の利用により大規模に実施することで、実システムとして想定された数100mから数kmの磁気帆を展開する磁気セイルの推力発生を実証することができ、推力がコイル磁気モーメント・太陽風密度・太陽風速度にそれぞれ比例することを明らかにした。次に、磁気プラズマセイルの推力増加のパラメータサーベイを実施した。磁気プラズマセイルの小型実証機を想定した典型的なケースでは、プラズマ噴射なしの場合の0.07mNからプラズマ噴射ありの1.0mNへと推力が約14倍に増加したのに対し、パラメータの最適化により最人で97倍の推力増加が得られることが明らかになった。また、プラズマ噴射の速度、温度、流最、位置などによって推力増加の特性だけでなく、比推力(燃費)・推力重量比(加速度)・推力電力比といった推進性能も人きく影響を受けることが明らかとなった。その結果、上記3つの推進性能にはトレード・オフの関係がありミッションに応じたパラメータの設定が必要であることが明らかになったまた磁気プラズマセイルによって、より大きな加速を得るためには搭載する超伝導コイルシステムを展開するなど新しい技術の開発が必要であることが明らかとなった。最後に、上記で述べたような推力特性を反映させ、ミッションの検討を行った。現行の技術で建造ができる磁気セイルでは太陽-地球系のラグランジュ点付近での軌道保持が、磁気プラズマセイルでは金星や水星のような内惑星探査が可能となり、既存推進システムに対しても優位と成ることを明らかにした。これらの成果については、アメリカ航空宇宙学会の論文誌2編への投稿を行った。
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