研究課題
ジルコニウムを金属イオンとして、2,5-bis (methylamino) terephthalic acidを有機配位子として利用し合成した多孔性錯体にニトロ化反応を行った後、光照射による一酸化窒素の放出をChemiluminescence nitric oxide analyzerを用いて確認した。測定から光照射で一酸化窒素が放出される事が明らかになった。さらに、光のオン・オフで一酸化窒素放出制御も可能であって簡単に放出制御が出来る事も確認した。一酸化窒素放出量は、理論上では最大5.1mmol/gの一酸化窒素放出が可能であるが、実験結果は2,4mmol/gであった。この結果は理論値の47%であった。今回合成した光駆動型一酸化窒素放出PCPは金属イオンとしてジルコニウムを使用しており、潜在的に細胞毒性が危惧される。加えて、本研究で開発したPCPは負の表面電荷(-37mV)を有しており、細胞表面への接着性が疑問視された。これらの問題を解決するため、我々は生体適合性材料として知られるpolyethyleneimine (PEI)を用いて、PCPへの表面修飾を行った。細胞の表面は負の表面電荷を持っているため、細胞表面へのPCPの接着力を高めるためにはPCPの表面電荷が正である必要がある。PEIは細胞への毒性が低く、正の表面電荷を持つ材料として知られていることから、PCPへの表面修飾に最適であると考え、利用した。PEIを用いた表面修飾を行った後、ζ-ポテンシャル測定から+28mVの正に表面電荷に変わっている事が確認された。また、得られたPCPは粉末X線回折測定と電子顕微鏡画像からPCP構造を維持したまま、PEI修飾されていることが確認された。細胞毒性実験ではPEI表面修飾したPCPは生体適合性が明らかになり、期待した毒性減少効果も確認されている。
2: おおむね順調に進展している
現時点で多孔性配位高分子にN-nitrosamineを導入し、一酸化窒素の放出を確認していて細胞に対する毒性も確認している。細胞内に導入し、細胞刺激も可能である事を簡単な実験では確認しているので材料の開発という面ではかなり進んでいると思うが、化学反応メカニズムに対しては他の文献を参考しているだけで奇麗らデーターが得られないのが今後の大きな課題である。
開発した材料を用いて細胞刺激を行って細胞シグナルの変化を観察して見たいと思っている。そして、一酸化窒素放出のメカニズムに関しても化学的な証拠を集めて行きたいと思う。
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Dalton Transactions
巻: 4 ページ: 15868-15872
10.1039/C3DT50679G
Nature Communications
巻: 4 ページ: 2,684
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