平成24年度は近年注目を集めている局所化という方法を用いて、行列模型の分配関数の計算を行った。当初は数値的な計算を行う予定であったが、この方法を適用すれば、あるクラスの物理量を解析的に、且つ非摂動的に計算することが出来る。本研究では弦理論を記述すると予想されている行列模型や、場の理論の次元簡約によって得られる行列模型に対して、この局所化の方法を適用することで、理論の分配関数やある演算子の期待値を計算した。 その結果、私は以下の結果を得た。まず、場の理論から次元簡約で得られる行列模型の分配関数や期待値が、large-N極限においては元の場の理論のものと等しくなることを示した。これはよく知られているlarge-N reductionとよばれる現象であり、私の結果はそれを非摂動的に示した例を与えている。また、弦理論と関係する行列模型においては、弦理論にあらわれるD-braneやNS5-braneといった物体を記述する極限が存在することを、局所化の結果を用いて証明した。これは行列模型が弦理論を確かに記述していることの強い証拠を与えている。
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