研究課題/領域番号 |
12J01687
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村瀬 健太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 高階スピンゲージ理論 / 張力の無い弦 / 光円錐ゲージ |
研究概要 |
本研究の目的は大きく分けて2つある。1つは、超弦理論の1つの定式化である行列模型や超弦理論のある種極限である高階スピンゲージ理論を用い、一般相対論が抱える問題であるブラックホールの動的現象を解明することである。もう1つは、弦理論での時空形成の仕組みや弦理論の背景独立性の問題や張力の無い弦の性質などの根元的な疑問を解決し、弦理論自体をより完全な理論(究極理論)に近づけることである。 本年度の研究では、第1の目的では、弦理論の1つの極限と思われる高階スピンゲージ理論を中心に研究を進めた。この理論の枠組みでブラックホールの動的現象を調べる上では、主に低い時空次元のAdS/CFT対応を利用した。特に3次元の場合には対称性から非常に多くの事を調べられ、また時空の特異性を別の場へと押し付けることができることも分かった。今は3次元の場合だが、これらの事実を4次元以上の場合に拡張できれば、現実の我々の宇宙における現象の解明に新たな手段を与えると期待している。そこで今後まずは4次元以上の場合に時空の特異性の扱いに3次元の場合と類似の事が可能か考えることが重要である。 第2の目的では、高階スピンゲージ理論と特に関係が深いと考えられる張力の無い弦理論がこれまで知られていた時空の次元以外でも光円錐ゲージにおいては望ましい対称性を持つことを確認した。ここでいう対称性は質量の無い粒子特有の時空の共形対称性のことであり、それが量子化後も残るという結果は高階スピンゲージ理論と張力の無い弦理論の結びつきを考える上で1つの重要な手掛かりになると考えている。今回得られた共形対称性の観点で2つの理論の類似点を探すことは重要である。また超対称な弦や膜の場合にも共形対称性を持つかを確認し具体例を積み重ねることで、新たな臨界次元の弦をより確かなものにすると同時に、現在の所光円錐ゲージ特有の結果である理由を研究するのも重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
弦理論自体の根元的な問題を考える第二の研究目的に関して、研究会での発表と論文の発表(雑誌に投稿中)という具体的な成果はあるが本年度の内に雑誌への掲載が間に合わなかったことと、第一の研究目的に関しては研究は進んだものの発表できるような段階まで研究が進んでいないことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず張力の無い弦に関する成果に結びついた研究をさらに進めたいと考えている。具体的には、時空の共形対称性の観点から張力の無い弦理論と高階スピンゲージ理論との関係を詳しく探りたい。また超対称な弦や膜に対しても共形対称性があるか確認し、光円錐ゲージ特有の結果を与える具体例を増やすことで、この結果を起こす起源を探る。また本年度は期待通りに進まなかったブラックホールの動的現象の解明に関わる研究では4次元以上の場合に3次元の時のような時空の特異性の扱いができるかを考えたい。
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