研究概要 |
本年度は,分散制御型ロボット向けリアルタイムオペレーティングシステム(OS)の研究開発に関して,リアルタイムスケジューリング,リアルタイムOS,分散リアルタイム通信とリアルタイムLinuxに関する研究を行った. 申請者が提案した準固定優先度スケジューリングを申請者が開発したリアルタイムOSに実装した.準固定優先度スケジューリングはインプリサイスタスクをサポートしているため,従来のタスクをサポートしているリアルタイムスケジューリングと比較してオーバヘッドがどの程度増加するのか知られていない問題がある.そこで,本研究では,準固定優先度スケジューリングの実用性を実機評価した.評価結果より,準固定優先度スケジューリングは従来のスケジューリングと比較してインプリサイス計算をサポートしたことによるオーバヘッドの増加が小さいことを示した. 分散リアルタイムシステムを実現するための国際標準規格Responsive Link(ISO/IEC 24740:2008)に関する研究を行った.具体的には,Responsive Link固有の機能をユーザに利用しやすくするために, Responsive Link向けAPIの開発を行った.さらに,ノイズが多い環境下での通信を想定したノイズ耐性テストを行い,Responsive Linkのノイズ耐性値を測定した.評価結果より,通信速度が速いほど,ノイズ耐性が低下することを示した.また,Responsive Linkのノイズ耐性は,ノイズの多い環境でも十分に対応できることを示した. 米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校に留学し,リアルタイムLinuxに関する研究を行った.具体的には,受入研究室で研究開発しているリアルタイムLinuxにマルチプロセッサ向けリアルタイムスケジューリングを実装する研究を行った. 上記の研究は,分散制御型ロボット向けリアルタイムOSを研究開発する上で非常に重要であり,これらを研究する意義は十分にあると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りの研究は,分散制御型ロボットを構築する上で必要な準固定優先度スケジューリングをリアルタイムOSに実装し,またResponsive Link向けAPIの開発を行ったことである.当初の計画以上の研究は,リアルタイムLinuxにマルチプロセッサ向けリアルタイムスケジューリングの実装手法を構築したことである.また,この実装手法は準固定優先度スケジューリングにも応用可能である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針は,準固定優先度スケジューリングを用いて,分散制御型ロボットに対する実用性を実証することである.特に,モータ制御タスクや画像処理タスクを実装し,その有効性を既存のリアルタイムスケジューリングと比較評価する. これらのタスクを動作させるためのライブラリを開発する.特に,画像処理アルゴリズムは多岐に渡るため,ロボットに対して実用的な画像処理アルゴリズムを選定する.また,リアルタイムOSに実装した場合,オーバーロードした際に,画像処理タスクのデッドラインミスを回避するために,どの箇所の処理を中断可能にするべきかを設定する.
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