研究課題/領域番号 |
12J01747
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
安孫子 ユミ 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 親電子シグナル / S-トランスアリール化 / tert-ブチルベンゾキノン / Keap1/Nrf2 / 親電子物質 |
研究概要 |
親電子物質は、酸化ストレスや炎症等により内因的にも生じる。これらの親電子物質はタンパク質中の反応性システイン残基を容易に修飾して被修飾タンパク質の活性を変化させる。それにもかかわらず、生体内恒常性を維持できることは、生体内には親電子物質に対する優れた制御系が存在することを示唆している。親電子修飾による被修飾タンパク質の活性変化に関する研究は多く存在するが、被修飾タンパク質の細胞内運命に関する報告は希有である。 本研究は親電子物質に修飾されたタンパク質の細胞内運命を明らかにすることを目的とし、Keap1/Nrf2システムを被修飾タンパク質、tert-ブチルベンゾキノン(TBQ)を親電子物質のモデルとして研究を行った。Keap1はシステイン残基を豊富に有するセンサータンパク質であり、そのシステイン残基が修飾を受けるとNrf2は活性化する。TBQにRAW264.7細胞を曝露すると、TBQによるNrf2の活性化は一過性であったことから、TBQにより阻害されたKeap1の活性は何らかの機序により回復したことが示唆された。本研究では、被修飾タンパク質の細胞内運命として、1)オートファジーによるバルク分解、2)被修飾タンパク質の親電子修飾解除を想定し検討を進めている。 本年度の研究によって、TBQと結合したKeap1へのTBQの修飾が、グルタチオン(GSH)によりS-トランスアリール化反応を介して解除されることが示唆された。このS-トランスアリール化反応の生成物として予測されるTBQ-グルタチオン結合体(TBQ-SG)を化学合成し、UPLC-MS^E解析およびMR解析により同定したところ、TBQ-5-SG、TBQ-6-SGおよびTBHQ-di-SGを得た。これらの合成標品を用いて、TBQと結合したKeap1とGSHのS-トランスアリール化反応の副生成物の同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、当初予定していたTBQ-Keap1のオートファジーによる分解系に関する検討ではなく、時間がかかると予想した親電子修飾解除機構の検討を優先的に行った。平成24年度の成果を平成25年度に開催される国際学会で発表するために準備を行い、その要旨は採択された。平成24年度に行うべき研究等は充分に達成されたと考える。よって、"(2)おおむね順調に進展している"と自己点検により評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、残された課題である"被修飾タンパク質のオートファジーによる分解系"に関する検討を行う。 今年度は研究データを蓄積することに主力を尽くした。平成25年度は本研究助成の最終年度であるため、研究データの蓄積だけでなく、平成24年度以上に精力的に、得られた研究成果を学術学会で発信して、論文投稿を行い、特別研究員(DC2)としての職務を遂行する。
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