研究課題
親電子物質は、環境中から外因的に摂取されるだけでなく、炎症や酸化ストレス等により生体内でも内因的に産生される。これらの親電子物質は、タンパク質中の反応性システイン残基を容易に修飾して、被修飾タンパク質の活性を変化させる。親電子修飾による被修飾タンパク質の活性変化に伴うシグナル伝達に関する研究は多く存在するが、被修飾タンパク質の細胞内運命に関する研究は希有である。本研究は、親電子物質に対する感知・応答システムとして知られるKeap1/Nrf2システムに着目した。Keap1はNrf2を負に制御し、Keap1が親電子修飾を受けるとNrf2は活性化する。親電子物質であるtertr-ブチルベンゾキノン(TBQ)によるKeap1の修飾を介したNrf2の活性化は一過性であり、TBQと結合したKeap1 (Keap1-TBO)へのTBQの修飾が、グルタチオン(GSH)により5S-トランスアリール化反応を介して解除されることが示唆された。前年度は、S-トランスアリールレ化反応の生成物として予測されるTBQ-グルタヂオン結合体(TBQ-SG)を化学合成し、Keap1-TBQとGSHのSトランスアリール化反応の副生成物の同定に成功した。本年度の研究では、GSHのS-Lトランスアリール化反応によりKeap1-TBQからTBQが解除されていることをUPLC-MS^E解析を駆使して示した。また、GSH合成阻害剤であるBSOでHepG2細胞を前処理した後にTBQを曝露すると、TBQによるNrf2の活性化が持続したことから、本反応はKeap1/Nrf2システムを制御していることが示唆された。これらの研究成果から、親電子修飾によるシグナル伝達は、GSH依存的S-トランスアリール化反応を介した親電子修飾の解除により一部制御されていることが示唆された。
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Chemical Research in Toxicology
巻: 26 ページ: 1080-1087
10.1021/tx400085h.