研究課題/領域番号 |
12J01775
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
瀬戸川 剛 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 眼窩前頭皮質 / 単一ニューロン活動記録 / 行動決定 / 指数関数割引モデル |
研究概要 |
我々が豊かな生活を送るためにあらゆる場面で行っている行動決定の神経基盤は未だ明らかにされていない。脳内には、外界からの感覚情報から介在的な情報処理を経て最終的な運動出力へと結び付ける行動決定機能が存在しているはずである。また、複数の選択肢の中から1つを選び出す際には、それぞれの選択肢の価値を計算・比較していると考えられる。それら選択肢の価値は報酬を得るまでの仕事量や最終的に得られる報酬量によって決定されることが一般的に言われている。先行研究において、このような価値情報の処理に眼窩前頭皮質が重要な役割を果たしていることを示唆する結果が得られている。本研究では、報酬の価値情報から行動決定に至るまでにどのような処理がなされているかを明らかにするために、認知課題遂行中のサル眼窩前頭皮質より単一ニューロン活動記録を行った。 実験は、サルを3本の金属バーが付属している椅子に座らせ行う。サル前方に設置されたモニタに報酬を得るまでに必要な仕事量と報酬量の2つの情報をコードしているターゲットを順々に2つ提示する。その後、これらのターゲットを今度は固視点の左右に2つ同時に提示し、サルは左右の金属バーに触れることでどちらかのターゲットを選択することができる。ターゲット選択後は、そのターゲットがコードしている仕事(視覚弁別課題)を遂行することで報酬である水を得ることができる。 まず、それぞれのターゲットの価値をサルのターゲット選択確率から指数関数割引モデルを用いて推定した。眼窩前頭皮質より上記の課題遂行中の単一ニューロン活動記録を行った結果、2つのターゲットの価値の差分と相関のある活動がみられるニューロンが見つかった。さらに、2つのターゲットの価値の差が小さいほど発火頻度が高くなるニューロンも記録された。このニューロンは、選択を行う際の葛藤を反映していると考えられる。記録部位と記録されたニューロンタイプの分布の関係性をみてみると、上記の価値の差分を表現したり葛藤を表現したりしているニューロンは眼窩前頭皮質の小部位に集中して存在している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、認知課題の構築、1頭目のサルからの単一ニューロン活動記録が行えている。
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今後の研究の推進方策 |
2頭目のサル眼窩前頭皮質より単一ニューロン活動記録を行う。また、眼窩前頭皮質に薬物投与を行い不活性化させ、その際の認知課題遂行時の行動データを解析することで、同部位の行動決定における役割を調べる。
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