研究概要 |
本研究の目的は,転倒リスクの低い地域在住高齢者におけるウォーキングの転倒予防効果を明らかにする.それにより,実践率の高いウォーキングによる転倒予防のポピュレーションアプローチへの活用が期待できる. 転倒予防運動では下肢筋力とバランスの訓練が主流であり,活動量(≒転倒機会)を増加させるウォーキングに着目した研究は少ない.しかし申請者らは,低リスク高齢者にはある程度の転倒機会を経験させることが,転倒回避動作の上達やリスク悪化の抑制につながると考えられる. 研究課題1の,ウォーキングと転倒の関連について転倒リスク別に検討する横断研究は,すでに学術誌に掲載されていたが,2012年に日本体力医学会学会賞を受賞した。 研究課題2では,ウォーキングが転倒発生に与える影響を,転倒リスク別に検討する縦断研究を遂行している,自治体が主催する高齢者の体力測定会におけるデータ収集を2008年から毎年継続し,2012年までに約450人・年の縦断データを収集することができた.第13回日本健康支援学会では,研究課題2についての途中経過を発表した. 研究課題3では,低リスク地域在住高齢者におけるウォーキングの転倒予防効果を検証する介入研究を遂行している.参加者は65~79歳の地域在住高齢者で,転倒リスク因子が0~2つまでの者とした,対象者はウォーキング群とバランス群に分かれて,3ヵ月間,週1回,1回120分の運動教室に参加した.ウォーキング群には自宅でのウォーキングを1回30分,週5日実践することを推奨し,バランス群には自宅でのバランス運動を週5回実践することを推奨した.教室前後の測定により,筋力,バランス能力,歩行能力,活動量,転倒発生状況およびつまずき頻度を調査し,全体的な改善の傾向を確認した.さらに運動教室修了から1年間,毎月のフォローアップ調査をおこない,運動継続の励ましを与えながら転倒発生状況の把握をおこなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約400名の体力測定会と50名の3ヶ月間の運動介入に伴う対象者の募集,測定,運動指導,追跡調査,スタッフとの連絡などの業務は非常に煩雑であった.しかしながら,昨年度は研究データの蓄積を予定しており,質の高いデータを収集することに成功している.
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今後の研究の推進方策 |
新年度は蓄積してきたデータを完成させ,研究成果の発信を活発にしてい予定である.10月の体力測定会で610人・年の縦断データ収集が完了した後に,研究課題2である縦断研究をまとめて国際誌に投稿する.研究課題3の介入研究は2013年4~7月におこない,その後1年間の追跡調査をおこなう.介入前後のデータが揃った段階で,ウォーキング実践が転倒リスクに与える効果についての研究をまとめて学会発表および国際誌への投稿をおこなう.
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