本研究は、これまで研究代表者が開拓してきたブラシ状ポリマーの機能化を基盤技術として「あらゆる分子を階層的に集積させ、さらにその配向方向を任意に制御する技術」へと展開することを目的としている。目的の一つに掲げている「階層的分子配列」を実現するための基礎となる現象「ブラシポリマーの秩序構造形成」のメカニズムを明らかにするため、昨年度はブラシ側鎖の構造に着目して網羅的に調査した。本年度は引き続き、ブラシ主鎖の化学構造および剛直性に着目して系統的にその効果を調査した。その結果、主鎖の剛直性がブラシポリマーの規則的構造形成に大きな影響を与えることが明らかとなった。 ブラシポリマーの集合形態を決定する構造パラメータとして、主鎖の化学構造および剛直性が関連しているという発見は、その集合構造を用途に合わせてデザインするための重要な知見となることは言うまでもなく、また一般的な高分子の自己組織化的構造形成を議論する上でも非常に興味深い。これにより、本申請が掲げる最終課題「オンデマンド型分子プラットフォーム : あらゆる分子を階層的に集積させ、かつ配向制御を可能にする足場」を開発するための普遍的分子デザインのエッセンスをより具体的に描き出すことが可能となった。得られた知見を基盤として分子構造をデザインすることで、ブラシポリマーの集積構造を任意に設定することができ、さらなる集合構造の階層化、巨視的な配向制御といった応用的展開へもスムーズに移行できると期待される。 本年度も前年度に引き続き、アイントホーフェン工科大学(オランダ)で研究の一部を遂行した。現地滞在中に論文発表3件、学会発表3件を行い、またカリフォルニア大学アーバイン校(アメリカ)の共同研究先へも出向き、実験および研究成果の発表を行っている。
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