研究概要 |
平成24年度の当初の研究目的は,単体の金属元素やレアメタル元素を使用する製造法からの脱却と,製造コストを大幅に削減する革新的製造技術の確立であった.当初の目的達成のための研究実施計画では,(1)燃焼合成製SrTiO_<3-δ>の熱電特性調査と,(2)n型SrTiO_3熱電変換材料の一段階製造法の開発を実施する予定であった. 平成24年度の研究実績は,商用化しているBi_2Te_3系熱電素子を用いた熱電発電ユニットのLCA評価とエネルギー収支分析を実施し知見を得た。LCA評価とは,製品やサービスのライフサイクル全体を通しての環境・エネルギー影響,すなわち原材料の採掘から製品の製造までの環境負荷や消費エネルギーを定量化する評価法である.現在既に商用化している熱電発電モジュールの多くはBi_2Te_3系熱電素子を使用したものであり,熱電発電の普及を推し進める上で比較のベースとなるBi_2Te_3系熱電素子を使用した熱電発電モジュールの環境影響を把握することは極めて重要である.現状を把握した上で,環境影響をより多く占める工程のあぶり出しや,環境負荷の小さな元素の選択へと先導が可能となる.さらに,従来の排熱回収技術や太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギー技術と総合的な比較をすることで,熱電発電システムの相対的評価が可能になる. 交付申請書に記載した(2)n型SrTiO_3熱電変換材料の一段階製造法の開発に関しては平成24年度の研究開始前に十分な成果を得,英語論文に発表し,印刷済みとなったため平成24年度研究成果には含めなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的からの変更があったため,論文発表まで進展していないが,成果を積み重ね,次年度への指針を得た.また,研究の前倒しで研究を進め,当該年度前に目的の1つを達成した.平成25年度には,平成24年度に得た成果を英語論文に取り纏め発表できる見込みであるため,達成度を(2)とした.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は,当初の研究計画を一部変更し,資源循環に目を向けた研究を実施する予定である.可採埋蔵量の低下が著しい資源や,リサイクルによる二次利用の困難な資源の利用は循環型社会形成の足枷であることは想像に難しくない.このため,熱電変換素子にたびたび利用されるレアメタル元素を取り上げ,世界規模で資源のストックやフローを定量化し把握することを目的とする.
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