平成26年度の当初の研究目的は、中高温用酸化物熱電モジュールの開発と、多段式熱電モジュールの開発であった。当初の目的達成のための研究実施計画では、①開発済みのp/n型熱電変換酸化物を用いて中高温用酸化物熱電モジュールを製造と、②①で得た知見を活かし、2種類のp/n対を用いて多段式熱電モジュールの開発を実施する予定であった。 当初の予定を変更し、Fe2VAl熱電素子の新規製造法であるテルミット合成法の熱力学的解析を実施した。平成25年度中に得た成果を英語論文に取り纏め、エネルギー関連の著名な科学論文誌Journal of Applied Thermal Engineeringで印刷済みである。 また、Bi2Te3系熱電素子を用いた熱電発電システムのLCA評価を実施した。LCA評価とは、製品やサービスのライフサイクル全体を通しての環境・エネルギー影響,すなわち原材料の採掘から製品の製造、廃棄・リサイクルまでの環境負荷や投入エネルギーを定量化する評価法である。現在、既に商用化している熱電発電モジュールの多くはBi2Te3系熱電素子を使用したものであり、排熱から発電可能な省エネルギー技術である熱電発電の普及を推し進める上で、基準となるBi2Te3系熱電素子を使用した熱電発電モジュールの環境影響を把握することは極めて重要であるという考えのもと、当該研究を実施した。その結果、熱電発電システムの全ライフサイクルでは運用(発電)の際の化石燃料消費量、CO2排出量が多大という結果を得た。これは発電時の冷却水用ポンプの動力として買電を仮定したことと、冷却水として工業水を想定したことに起因したためであった。 得られた成果を2014年9月の第十一回日本熱電学会学術講演会および2015年3月の第十回日本LCA学会研究発表会にて口頭発表した。また、英語論文はエネルギー関連の科学論文誌で現在査読中である。
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