研究課題/領域番号 |
12J01926
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
兵頭 和樹 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 換気性作業閾値 / 低強度運動 / 前頭前野 / ストループ課題 / 健常高齢者 / 近赤外線分光法 |
研究概要 |
昨年度までの研究で、換気性作業閾値(VT)が出現する強度(中強度)の運動を高齢者に対して10分間行うことで、前頭前野機能を評価するストループ課題の成績が向上すること、そしてそのメカニズムとして、加齢による脳機能低下を防いでいると考えられる右前頭極(FPA)の活動が運動により増加することを、光による脳機能イメージング技術である近赤外線分光法(fNIRS)を用いて明らかにした(Hyodo et al 2012, Neurobiol of Aging)。今年度は、まずVTという最大下有酸素能力の指標と、高次認知機能(ストループ課題の成績)、そして認知課題中の脳活動の関係性を高齢者で横断的に検討し、VTが高い高齢者は認知機能が高く、その背景には若者型の脳活動(左半球優位)が起こることを明らかにした(論文投稿準備中)。そして、次なる研究として、多くの高齢者にも適応可能な低強度の運動効果に着目し、一過性の低強度運動が前頭前野機能に与える影響の検討に着手した。まず、低強度運動の実験モデル作りを行うために、低強度運動の強度設定を漸増運動負荷試験で得られるVT強度負荷の50%(50%VT)とし、強度設定が妥当であるかを確認した。その後、10分間の50%VT運動後の皮膚血流、中大脳動脈血流速度の動態を測定し、低強度運動後は5分以内でfIIRSに影響のある上記のパラメータが安静レベルに落ち着くことを確認した。以上の結果を踏まえたうえで、健常高齢者に対して低強度(50%VT強度)運動の前と5分後にストループ課題を行わせ、まず一過性低強度運動が前頭前野機能に与える影響を行動データから調査した。現在実験段階であるが、ストループ干渉が起こる困難なIncongruent条件の反応時間が運動後に短縮することを示唆する結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、一過性の低強度運動の効果を検証するにあたり、まず低強度運動の実験モデルを確立するために時間を要したため、本実験への取り掛かりが遅れてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度確立した低強度運動の実験モデルを応用し、一過性の低強度運動が高齢者の脳機能に与える影響を検討するとともに、長期の運動介入による高次認知機能の向上効果を検証するための予備的検討をおこなう。
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