研究実績の概要 |
本研究は、低体力者でも適応可能な低強度の運動トレーニングが高齢者の前頭前野機能に与える効果の脳内メカニズムを、最新の脳機能イメージング装置である近赤外線分光法装置(fNIRS)を用いて明らかにすることを目的としている。 昨年度までで、一過性の低・中強度運動が健常高齢者の実行機能(前頭前野が司る高次認知機能)を高める脳内機構を明らかにしてきた(Hyodoら, Neurobiol Aging,2012 ; Byunら、Neuroimage,2014)。また、低強度運動で向上する有酸素能力である換気性作業閾値(VTが高い高齢者は実行機能が高く、その脳内機構として、若者型の左半球優位の脳活動が保たれていたことから(論文投稿中)、本年度は、VTを高める3ヶ月間の低強度運動介入が健常高齢者の実行機能に与える影響とその脳内機構について検討した。 健常高齢者を通常生活を送らせる安静群と、3ヶ月間低強度運動トレーニング(週3回、1時間、35~40%VO2peakの自転車運動)を行なう低強度運動群に振り分けた。両群とも、介入前後で漸増運動負荷試験によるVT測定、ストループ課題による実行機能測定をおこなった。課題中の前頭前野の活動はfNIRSで測定した。有酸素能力に関して、低強度運動群ではVTの低下が抑えられて運動効果が見られた。また、認知課題成績は、低強度運動群でのみストループ課題の中でも実行機能を反映するストループ干渉の反応時間において有意な短縮が見られた。本研究の結果は、わずか3ヶ月間の軽運動でも高齢者の実行機能を高める効果があることを示唆している。現在はfNIRSデータを解析中であり、その脳内機構を解明していく予定である。
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