研究課題/領域番号 |
12J01932
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
孫 健 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 乳酸ポリエステル / PHA / 不飽和ユニット / 化学修飾 |
研究概要 |
申請者は平成25年度において、化学修飾が可能である不飽和ユニットを有する乳酸ベースポリマーを生合成するため、「ポリマー中の不飽和ユニット分率の制御」と「不飽和ユニットを有するベースポリマーの大量生産」を中心に研究を行った。 本研究では化学反応性が高い不飽和結合側鎖を有する乳酸ベースポリマーを合成し、化学修飾によって水酸基の付加をすることで、分解性と生体適合性が高い親水性乳酸ベースポリマーの創出を目指している。以前の研究で、2-ヒトロキシブテン酸を用い、大腸菌における不飽和結合を有する乳酸ベースポリマーを生合成する経路を構築し、不飽和ユニットと共重合した乳酸ポリマーを生合成することができた。しかし、ポリマーの化学修飾とその物理的性質の分析をするため、ポリマー中の不飽和ユニット分率の制御と不飽和結合を有する乳酸ベースポリマーの大量合成が必要であった。 そのため、①ポリマー生産性の高い大腸菌株の検討、②乳酸ベースポリマーの重合の鍵となる乳酸重合酵素PhaClSTQKから重合能力の高いPhaClSTQKFSへの変更、③培地中に添加する2-ヒトロキシブテン酸の濃度の検討、④培養中の炭素源をglucoseからポリマー合成に有利なxyloseへの変更、の4つの研究内容を行った。その結果、GCとNMRの分析によって、2-ヒトロキシブテン酸の分率が0~13 mo1%の不飽和ユニットを有するポリマーが生合成されたことが分かった。また、不飽和ユニットを有するポリマーの生産量を従来の0.08g/Lから0.7g/Lに上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌によるポリマー生合成の条件検討によって、2-ヒトロキシブテン酸を前駆体として用いた不飽和ユニットを有するポリマーの不飽和分率の制御と大量合成が可能になった。そのため、不飽和ユニットを有するポリマーに様々な割合で官能基を導入することが可能となった。さらに、化学修飾によるポリマーの物理性質と分解性の変化を調べられるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では不飽和分率の制御可能な不飽和ユニットを有するポリマーの大量合成が成功したため、平成26年度において、「ポリマーの親水性化学修飾と物性解析」を中心に実験を行う。 具体的に、①不飽和ユニットを有するポリマーに対する親水基の導入実験の条件を検討し、ポリマー化学修飾を行う。さらに化学修飾前後の②ポリマーの親水性変化の分析③ポリマーのフィルムを作り、物性の解析④ポリマー分解性と生体適合性の解析を行う。 また、この研究の最終成果を論文にまとめる。
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