研究課題/領域番号 |
12J01949
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
トラン ナムホアイ 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ミューオン / GEM / TPC / シミュレーション / ミューオン源 |
研究概要 |
本研究の目的は、核物理研究センターで開発中のミューオン源MuSICで遂行するμ→eee崩壊事象の探索実験に用いるタイム・ドリフト・チェンバー(TPC)を開発する事である。初年度の計画は、a)バックグラウンドと検出器のシミュレーション、b)TPCプロトタイプの作成、そしてc)DAQとプログラム解析である。昨年実施されたMuSIC施設での実験では主にDAQを担当し、ミューオン発生と36度輸送ソレノイドのビームラインにおける運動量分布を測定した。また同時に陽子電流を1μAに増強した場合の放射線管理の認可を受けるための放射線遮蔽の基礎データを得るための線量分布を測定した。シミュレーション研究において、検出器のためのevent generatorとGeant4シミュレーションを作成した。event generatorはμ→eee事象を生み出し、Geant4シミュレーションによってトラッキングが行われた。このシミュレーションによりTPC検出器のアクセプタンスは運動量の選択された閾値によることが判明した。また、検出器のGarfieldシミュレーションによる電子輸送、信号形成イオン流の研究が進展した。TPCのデザインにおいて、シミュレーションの結果や他の研究所の開発を参考にしてTPCプロトタイプの設計を行っている。検出器技術の専門家から学ぶ機会を得るためKEKでのEDIT2013(Exellence in Dtector and Instruments)に参加し、ガス検出器の開発の演習に参加した。そこでは、ワイアーチェンバーを作り、その特性を測定し、信号解析を行った。加えて、GEM検出器を操作する機会もあり、その際3段階の増幅を行うGEM検出器を用いた。またこれらのGEM検出器は2次元の情報を与えることが出来、この経験によって、プロトタイプの詳細な形状、すなわち機械的な構造、ガスの供給系、信号の読み出し系、レジスターの組み合わせ、その他の電気回路について開発を行っている。また同時に全システムの価格評価を行った。基本的にはDAQはMidas(http://midas.psi.ch/)に基づいており、データはVME基盤によって集積される。それらは、PSIのMuLan実験で設計されたADC,TDC、wave form digitizer(WFD)、WFD基盤によって構成されている。DAQシステムの開発とその分析のため、前述のようなMuSICビームテストや、他の実験(COMETというミューオン捕獲のバックグラウンド測定)に参加し、経験を積み重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、TRIUMF研究所でのテスト実験を予定していたが、加速器施設の、特にミューオンビーム輸送系の故障によってビームタイムがキャンセルされた。新たにPSIでの研究計画を作り提案し、実験は受理され、その実施計画は今年年末に予定されている。
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今後の研究の推進方策 |
TPCのデザインを第一優先として考える。そのため1)5月にGarfieldによるシミュレーションを終え、2)6月に設計と製作行い、3)7月と8月に電気信号読み出し系の試作を行う。その後、放射性線源と宇宙線を用いて粒子軌跡の測定を行い、実際の加速器からのビームを使って検出器のビームテストを行う。実際のビームテストではこの検出器をミューオンの標的での捕獲による重粒子の検出に用いる予定である。すなわちミューオンはアルミニウムカソード中で止まり、入射されたミューオンおよび生成された中粒子は検出器内において軌跡が測定される。
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