研究課題
卵生脊椎動物において、ビテロジェニン(Vtg)は、その受容体(Vtgr)を介したエンドサイトーシスにより卵母細胞内に取り込まれ卵黄を形成する。一般に、リポ蛋白質受容体(LR)はリガンドと結合すると、LRアダプター蛋白質やクラスリンと呼ばれるエンドサイトーシス関連因子と複合体を形成し、エンドサイトーシスを開始する。最近、アフリカツメガエルにおいて、LRアダプター蛋白質の一つである常染色体劣性高コレステロール血症原因蛋白質(Arh)が、Vtgrを介したVtgのエンドサイトーシスに関与することが示唆された。本研究では、魚類の卵黄形成を開始あるいは制御する因子の候補としてArhに着目し、その生化学的性状を明らかにすることを目的とした。卵巣抽出液を試料として抗Arh抗体(a-Arh)を用いたWestern blot法に供した結果、還元処理下において、Arhの推定分子量と近い約36 kDaの蛋白質バンドを検出した。この抗体を用いて免疫組織化学的手法に供し、Arhの卵巣における局在を調べた結果、Arhは卵黄形成に関与しない可能性が示唆された。そこで、他に卵黄形成に関与するArhのサブタイプが存在する可能性を考え、再度Arh遺伝子のクローニングを行った。その結果、新たに一種類のArh様遺伝子が得られた。そこで、先に得たものをArh I、後に得たものをArh IIとし、これらの発現解析を行った。その結果、Arh IIはVtgrと良く似た発現パターンを示し、このことから、卵母細胞におけるVtgrを介したVtgのエンドサイトーシスに特にArh IIが関与する可能性が示された。以上、本実験では本種卵巣に発現する二種Arhの発現動態を魚類で初めて明らかにした。研究の成果は、魚類卵巣におけるVtgrを介したVtgのエンドサイトーシス機構に関して新たな基礎的知見を提供した。
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Comparative Biochemistry and Physiology-Part B
巻: 166 ページ: 81-90
10.1016/j.cbpb.2013.07.005
Comparative Biochemistry and Physiology-Part A
巻: 166 ページ: 263-271
10.1016/j.cbpa.2013.06.026