研究概要 |
本研究課題で取り扱う重力レンズ現象とは、遠方天体の像が、観測者と遠方天体の間に位置する質量分布によってゆがめられる一般相対論的な効果である。一般に重力レンズ効果による像のゆがみ具合はわずかなものであるが、統計処理を施すことにより視線方向に位置する質量分布を再構築することが可能である。この方法は、銀河団のような孤立した大質重天体の同定に利用できる。また、重力レンズ現象によって再構築された質量分布は、我々の宇宙の組成や膨張史に依存しているために、重力レンズ解析により我々の宇宙の組成や膨張史に制限を与えることができる。 採用第一年度は、重力レンズ解析によって再構築される二次元質量密度場(convergence field)に関する統計解析と、その結果得られると期待される宇宙論的な制限についての研究を行った。統計解析手法として、convergence fieldのもつ宇宙論的な情報をより効率的に捉えるために、ミンコフスキー汎関数という形態学に関する統計量に注目した。ミンコフスキー汎関数は、2次元場に対しては、一点分布(V0),等高線の長さ(V1),等高線の曲率(V2)の3つで定義される。この研究では、高解像度の宇宙論的N体シミュレーションを利用することで、非線形な重力進化を考慮したconvergenceマップを作成した。作成したconvergenceマップに対し、ミンコフスキー汎関数を計測し、convergence fieldのもつ宇宙論的な情報がミンコフスキー汎関数を通じてどのように明らかにできるかを示した。また、ミンコフスキー汎関数を使った解析は、従来よく用いられてきた2点角度相関関数による解析より強い宇宙論的な制限を可能にすることが分かった。また、実際の観測に含まれるマスク領域がどのようにミンコフスキー汎関数解析に影響するかを調べた。・さらに、convergence fieldと視線方向に位置する孤立した銀河団クラスの大質量天体の関係についての研究を行った。重力レンズ解析によって得られたconvergence fieldから大質量天体を同定する際には、通常convergence fieldのピークを指標にする。ノイズレベルより十分に大きいピークは、1014-1015太陽質量程度の大質量天体と関係していることが先行研究により知られていた。この研究では、多数の高解像度シミュレーションを利用することで、convergenceのピークが、大質量天体のどのような性質を反映しているかを調査した。この研究により、convergenceピークはこれまで考えられていたより比較的内部の質量構造に感度をもっており、大質量天体の楕円率とその向きにより、convergenceピークでの大質量天体同定にはバイアスが生じることが明らかになった。このバイアスは三軸不等質量密度モデルによる理論モデルによって計篁で労.理論干ヂルキシミュレーシqン結果が整合的であるrとタ禾した.
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