初年度の昨年度は、植民地期の朝鮮独立運動の中で、これまで充分に扱うことのできなかった社会主義勢力以外の勢力(民族主義勢力、在日朝鮮人留学生)と、同時代の中国および台湾の民族運動との関連性を解明することを目標に研究を進めた。 台湾との関係に関しては、日本で活動していた朝鮮人の李達が1910年代中盤に組織した東洋青年同志会および機関誌『革新時報』『新朝鮮』の分析を通して、六三法撤廃を目指して動きだした台湾民族運動との連携の動きがあったことを明らかにしたが、朝鮮人と台湾人が結びついた互いの論理や思想的傾向などは今後の課題として残された。 一方、中国との関係に関しては、辛亥革命に参加していた中国人革命家が朝鮮人活動家に多大な影響を及ぼしていたことを解明した。また、最初に朝鮮人と同じ団体で活動した台湾人である蔡伯毅の履歴を詳細に調べることで、彼が辛亥革命に参加した経験を有していたこと、ゆえに中国人革命家と深いネットワークを有していたことが分かり、反帝国主義に向けた東アジアの国際連帯において、朝鮮は後発であったことが判明した。その原因についても、考察を加えた。 以上の内容は、私の博士論文を著書『朝鮮独立運動と東アジア1910-1925』(思文閣出版、2013年)として刊行する際に、博士論文にかなりの修正を加えた反映させることができた。とはいえ、朝鮮独立運動と深い関係を持っていた中国人の大半が孫文派であったことの原因までは著書に反映させることができず、今後の課題として残された。
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