研究課題/領域番号 |
12J02020
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塩谷 芳也 大阪市立大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 職業的地位認知 / 地位志向 / 社会的不平等 |
研究概要 |
本研究課題の目的は、職業的地位認知(職業の社会的地位をどれだけ細かく、多段階に区別して認知するか)の個人差が地位志向(高い社会的地位を獲得・維持したいという動機づけ)の強弱を通して個人の社会的地位の変動に影響するという仮説を実証し、職業的地位認知を媒介要素とした社会的不平等の生成・維持・変革メカニズムを解明することである。この目的を達成するため、昨年度は15-34歳の男性1235名(正規雇用、非正規雇用、無職)を対象にインターネット調査(第1波調査)を行ったが、今年度は同一の回答者に対して追跡調査(第2波調査)を行った。第1波調査から約10ヶ月の間隔を空けて第2波調査を実施し、個人が持つ職業的地位認知と地位志向について2時点で測定を行った。職業的地位認知の測定においては、パソコンの画面上に様々な職業名を示したカードを表示し、マウスを用いて各職業を分類していただいた。データ収集について、当初は第2波調査でのサンプルの大幅な脱落が懸念されたが、最終的には817名(第1波調査の66%)から回答が得られたため、統計的な分析に耐えうるだけの十分なサンプル・サイズを確保することができた。第1波調査データと第2波調査データを接合することにより、パネルデータを作成した。これにより、職業的地位認知と地位志向の因果関係を分析するためのデータセットが得られた。両者の関係性を明らかにし、双方向因果仮説を検証することは本研究課題の中核的要素であるが、今年度の取り組みにより、この仮説を検証するための準備が整った。 加えて、社会的不平等の生成メカニズムを多角的に検討するため、ソーシャルスキル(対人コミュニケーション能力)と雇用形態(正規雇用か否か)の関係について研究し、2度の学会報告を行った。さらに、「東日本大震災における軽度被災者のメンタルヘルスに対するソーシャル・サポートの負の効果」という論文を執筆した。この論文は『社会心理学研究』第29巻第3号に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の計画に沿う形で研究を遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も研究計画に基づいて研究を実施する。平成26年度は、平成24,25年度に収集したインターネット調査のデータを分析し、職業的地位認知と地位志向の関係性を明らかにするとともに、職業的地位認知の規定要因を解明する。これにより、職業的地位認知を媒介要素とした社会移動のメカニズムを実証し、かつそれが社会的不平等を維持し、再生産する機能を持つのか、あるいは既存の不平等を緩和する機能を持つのかを判定する。
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