本研究では、「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases)」を素材とし、感染症の実態・地球規模での取り組みとNGO支援の展開を考察することにある。該当年度では、昨年度実施した調査を公開するとともに、アフリカ現地での「支援」に焦点を当てた調査を予定していたが、2014年に流行したエボラ出血熱の影響でフィールド調査を実施することができなかった。そのため、国内での情報収集や日本で数少ないブルーリ潰瘍支援団体である神戸国際大学ブルーリ潰瘍問題支援プロジェクト(Project SCOBU)への活動・支援のインタビュー調査、ブルーリ潰瘍研究者との学術的な交流を図った。 該当年度の大きな成果は、著書『顧みられない熱帯病と国際協力:ブルーリ潰瘍支援における小規模NGOのアプローチ』(学文社、2014年9月10日)の刊行である。2010年度に提出した学位論文(博士論文)「顧みられない熱帯病<ブルーリ潰瘍問題>に対する感染症対策ネットワーク構築と小規模NGOの役割」をもとに、顧みられない熱帯病・ブルーリ潰瘍が流行している地域(本書ではガーナ共和国、トーゴ共和国、ベナン共和国での調査を盛り込んでいる)の実態に加え、国際機関、政府、NGOの3者の性質や役割、問題点を明確にしながら、ネットワークの構築可能性を実証的に検討している。また、医療以外の分野からの支援アプローチの可能性や、小規模NGO支援の可能性についても言及している。
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