研究課題/領域番号 |
12J02076
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
楠山 譲二 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 脂肪分化 / 骨分化 / メカニカルストレス / Cot/Tp12 / 骨芽細胞 / MKP-M |
研究概要 |
(1)メカニカルストレスのシグナル伝達機構におけるCot/Tp12の役割について解析を進めた。Cot/Tp12特異的阻害剤を施した骨芽細胞は、伸展刺激や低出力超音波によって誘導されるERKのリン酸化が阻害された。Cot/Tp12ノックアウトマウス由来骨芽細胞に伸展刺激を施すと、野生型に比較してERKのリン酸化が減弱していた。Cot/Tp12は間葉系幹細胞や脂肪細胞においても、低出力超音波によるERK活性化の上流分子として機能していた。間葉系幹細胞を低出力超音波を照射しながら脂肪分化または骨分化誘導培地にて培養すると、脂肪分化は抑制され、骨分化は促進された。しかし、Cot/Tp12阻害剤を施すことで、これらの分化調節はブロックされた。さらに特異的阻害剤を用いた実験で、ROCK-Cot/Tp12-MEK-ERK経路が低出力超音波による分化調節に関与することが示唆された。脂肪分化のマスター転写因子であるPPARgamma2はERKによるリン酸化部位を持ち、PPARgamma2の転写活性を減少させることが報告されている。低出力超音波刺激はPPARgamma2のリン酸化を著明に誘導したことから、PPARgamma2の転写活性の抑制が間葉系幹細胞の分化調節に影響を与えていることが示唆された。 (2)骨芽細胞の分化段階におけるMKP-Mの機能を明らかにするため、MKP-Mノックアウト(KO)マウスの骨格系の表現型解析を行った。肉眼所見において、MKP-M KOマウスは尾椎変形が観察された。椎間部の組織切片を作成したところ、変形の有無に関わらず、関節円板が軟骨様組織によって破壊されていた。MKP-MKOマウス胎仔の生体組織染色では頭蓋骨の石灰化の促進を認めた。またin vitroにおけるMKP-MKOマウス由来骨芽細胞の分化実験では骨分化マーカーの発現の上昇が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的における重要なターゲット分子の1つであるCot/Tpl2が、メカニカルストレスによる脂肪/骨分化調節機構のシグナル分子であることが明らかになった。本研究成果は、先端歯学スクール2012にて最優秀賞、第11回日本超音波治療研究会にて最優秀演題を受賞した。現在、学術誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
MKP-Mノックアウトマウスの骨格系解析については、来年度導入されるマイクロCTを用いた画像解析、骨形態解析にて詳細な検討を行う予定である。関節部変形の原因は骨芽細胞に加え、軟骨芽細胞、間葉系幹細胞の関与が考えられるため、これらの細胞の分化やストレス応答におけるMKP-Mの役割を検討する。また発生のどの部分において関節部変形が出現するのかを明らかにするため、組織染色を用いた胎仔の解析を行う。
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