研究概要 |
側根は後胚発生的に形成され、水分や栄養分を効率的に吸収するとともに、環境の変化に対応した根系を構築する上でも重要である。シロイヌナズナの側根形成開始においては、SLR/IAA14-ARF7-ARF19を介したオーキシン情報伝達, およびその下流で発現制御されるLBD (Lateral Organ Boundaries-domain)/ASL (Asymmetric Leaves2-like)ファミリーに属するLBD16/ASL18が重要な働きを担っている。この分子機構および側根原基の形成機構を理解するために、本年度は以下の解析を行った. (1) Auxin Response Factor 7 (ARF7)とARF19によるオーキシン情報伝達の解析 ARF7およびARFl9をそれぞれarf7 arf9二重変異体背景で過剰発現させたところ、異なる表現型がみられたことから、ARF7, ARF19のタンパク質の機能に違いがあることが示唆された。また、ARF7機能誘導型植物をもちいたマイクロアレイデータから、ARF7の下流で発現制御される新たな候補を探索し, 機能欠損変異体の表現型の解析を行ったところ、オーキシンに関連すると考えられる表現型をもつ変異体が得られた。 (2) タイムラプスイメージングによる側根原基発生の解析 側根原基の発生過程を理解するために, 共焦点レーザー顕微鏡をもちいたタイムラプスイメージングによって, 側根原基発生における細胞分裂および細胞分化パターンの解析を行った. 静止中心などの細胞特異的マーカーとともに細胞膜を可視化し, 側根メリステムが構築される過程を観察した. また, 3次元での細胞分裂のパターンを解析し, 側根原基において, 細胞分裂は高度に同調していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
側根原基発生のタイムラプスイメージングが可能になり, さまざまな細胞特異的マーカーの発現を通して, 側根メリステムが構築されていく過程を可視化した. また, 変異体背景において, マーカーラインを観察する準備がほぼ整いつつある.
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今後の研究の推進方策 |
側根原基のメリステム構築過程を明らかにするために, 今後は変異体をもちいた解析を進め, 分子機構を明らかにしていく, また, 原基内部だけでなく, 周囲の細胞との関係についても解析を進める. また、ARF7とARF19に関しては, 側根だけでなく, オーキシンが関与する他の表現型についての解析を進め, ARF7とARF19が連続的に活性化する生物学的な意義を明らかにしていく。
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