研究課題/領域番号 |
12J02090
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
磯野 拓也 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ポリロタキサン / ポリアセチレン / 環化重合 / 超分子 / 特殊構造高分子 |
研究概要 |
本研究課題はポリアセチレン主鎖上に刺激応答性を有するロタキサン構造を備えた新規構造高分子の精密合成を行い、外部刺激によるロタキサン部位のシャトリングの情報をポリマー主鎖のらせん構造(キラリティー)や共役長(色調変化)として効率よく出力させるシステムを構築することを目的としている。今年度は、刺激応答性ロタキサン構造を主鎖上に有するポリアセチレンの精密合成を実施した。重合性官能基として2つのフェニルアセチレン、テンプレートとして作用する官能基として4つのアミド基を備えたα, ω-ジアセチレンモノマー(化合物1)を新規に合成した。化合物1は一般的な低極性溶媒には不溶であり、高極性溶媒には溶解した。これらの高極性溶媒はモノマーと軸成分の相互作用を阻害するため、より溶解性の良いモノマーを合成する必要がある。そこで、化合物1に側鎖としてオリゴエチレングリコールモノメチルエーテルを導入したα, ω-ジアセチレンモノマー(化合物2)を新規に合成した。化合物2は低極性溶媒に可溶であり、ロタキサンを合成するためのモノマーとして有望である。続いて、フマルアミド構造と嵩高い末端封鎖基を有する軸分子(化合物3)も合成した。化合物2と化合物3はアミド基間の水素結合を介してホスト-ゲスト錯体を形成していると考えられ、これを環化重合することでポリロタキサンが得られると考えた。ジクロロメタン中、室温、モノマー濃度を0.03molL^<-1>として化合物2と等モルの化合物3の存在下で環化重合を実施した。その結果、重合は均一系で進行し、メタノール不溶分としてポリマーを回収した。しかし、得られたポリマーは溶媒に不溶であり、重合途中に環化重合よりも架橋反応が優先してゲル化した可能性が示唆された。今後はゲル化を伴わずに環化重合を進行させるための最適な重合条件の探索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでにpHや光に応答するロタキサン構造を持ったポリアセチレンを合成するためのモノマーや軸成分の合成を行ってきた。いくつかの系について軸成分の存在下に環化重合を行ってポリロタキサン合成を試みているが、溶媒に可溶なものが得られていない。最終目標のポリロタキサンの精密合成と機能開発までには至っていないが、モノマーの設計と合成はほぼ完成段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
ポリロタキサンを得るためのモノマーは既に合成が完了しており、今後は重合条件の最適化を行い、ポリロタキサンを効率よく与える手法を確立する。さらに、ロタキサン部位のシャトリングを情報出力させるための分子設計を行い、必要となる新規軸成分の合成を実施する。以上の成果をもとに、最終目標の刺激応答性ポリロタキサンの合成と機能開発を達成する。
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