研究課題
本研究の目的は脊椎動物の進化に伴う筋肉の複雑化において、多様化したmicroRNAの役割を明らかにすることである。そのために、脊椎動物のモデルとして小型魚類のメダカを用いて研究を行っている。miR-206は脊椎動物に広く保存された骨格筋特異的なmicroRNAである。私たちはこれまでメダカ胚を用いた発現様式及び機能の解析を行い、miR-206が胸鰭原基内の筋肉形成において重要な役割を担っていることを見いだしてきた。平成24年度はまず、miR-206のプロセシング過程における転写産物の検出と発現様式の同定を行った。受精後5日のメダカ胚において、miR-206の一次転写産物は体幹部と胸鰭原基内の両方の筋肉細胞で発現が検出された。一方、miR-206と同じファミリーに属するmiR-1の転写産物の発現は体幹部でのみ見られ、胸鰭の筋肉細胞では検出されなかった。よって両者の転写産物は異なる発現様式をとることが示された。次に転写制御機構についての解析を行うため、miR-206遺伝子の上流領域をGFPに連結させたレポーターコンストラクトをメダカへ導入し、miR-206の骨格筋特異的な発現を再現・可視化するトランスジェニック系統を作製した。転写制御因子については、筋肉関連転写因子の発現様式を同定し、有力な候補を見いだしている。さらに詳細な検証を行うため、トランスジェニック系統を用いて、胚発生過程におけるmiR-206遺伝子の転写制御因子とその制御機構について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
研究は予定通り順調に進んでおり、得られた知見の一部について論文を投稿している。また、ホヤの筋肉特異的miRNAに関する研究に貢献し、第二著者としてGEP誌に論文発表した。
平成25年度はmiR-206が調節する筋形成遺伝子の同定を目指す。メダカmRNAにおける3'UTR情報を集めたデータベースに対して、miR-206の標的配列の探索を行う。標的候補遺伝子についてはレポーター遺伝子を作製し、メダカ胚への顕微注入により標的遺伝子の検証を行う。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Gene Expression Patterns
巻: 13 ページ: 43-50
10.1016/j.gep.2012.11.001