今年度は、「著作権と時効」の研究の前提となる知的財産と占有の関係についての検討を行った。特に、フランスにおいて知的財産と占有概念の検討が詳細に論じられていることから、現代のフランスにおける議論状況の分析を行った。 フランスでは知的財産/知的財産権への占有概念を見いだすことが可能であると指摘され、知的財産法の様々な場面において知的財産/知的財産権の占有という概念が関連していることが明らかにされている。しかし、これは知的財産法の規定を無体物の占有という概念からも分析することができるとするに過ぎないものであり、その分析にあえて占有概念を用いる必要があるのかという疑問が拭えない。また、このような検討は、無体物に占有を認めることにより民法に規定されるような一定の効果を知的財産/知的財産権の占有に認めるというわけではなく、あくまで知的財産法典の規定について無体物の占有という概念から評価したに過ぎないと思われる。さらに、知的財産/知的財産権への占有概念を見いだすことが可能であるとの指摘を経てもなおフランスにおける知的財産法学においては、知的財産/知的財産権の占有概念に対して肯定的見解及び否定的見解が対立していることも明らかとなった。これらの研究成果は、「フランスにおける知的財産と占有」という題目で公表される予定である。 なお、本年度は博士論文の一部である「ドイツにおける先使用権制度の主体的範囲」の研究についても公表した。
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