研究課題/領域番号 |
12J02135
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
千原 正尚 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 血液精巣関門 / 精巣 / 減数分裂 / MRL/MpJ / ビタミンA欠乏 |
研究概要 |
【研究の目的】 本研究は、未だ不明な点が多い血液精巣関門(BTB)の制御機構を解明し、「BTBの破綻を原因とする造精機能障害の発生機序を探るとともに、有効な治療法開発へ応用するための知見を得る」ことを目指す。 【研究実施計画】 今年度は、「生体におけるビタミンA欠乏は可逆的に精子形成を停止させる」ことに着目し、ビタミンA欠乏食給餌(VAD)マウスを用いたBTBと精細胞分化の関連解析を行った。また、MRL/MpJ (MRL)マウスの熱抵抗性精子形成維持機構に関与する責任遺伝子座が存在する1番染色体約81cMおよび11番染色体約40cMの領域がMRLマウス型であるコンジェニックマウス(B6.MRLc1、B6.MRLc11)の作出を昨年度に引き続き行った。 【研究実績】 通常食給餌マウスと比較解析した結果、VADマウスの性成熟過程では精細胞分化の抑制とともにBTBの初期形成が遅延していた。またVADマウスでは、性成熟後の顕著な精巣変性と減数分裂の停止に先立ってBTBの崩壊が起きていた。さらに、VADマウスへのビタミンA再補填により精子形成再開後のBTBの再形成を解析した結果、BTBの再形成は特定の分化段階に達した精細胞の出現と一致して起こることを明らかにした。 コンジェニックマウスの作出については、各コンジェニックマウス(B6.MRLc1、B6.MRLc11)ならびにダブルコンジェニックマウス(B6.MRLc1c11)の作出が完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、VADマウスの精巣の解析より得られた知見は、精細胞とセルトリ細胞(BTBを構築する細胞)は相互に密接に関わり合いながらBTBの局在を制御し、精細管内を精子形成に適した微小環境に維持していることを示唆する。前年度行った精子形成過程におけるclaudin3の機能解析から得られた結果と合わせると、BTBは精細胞の体系的な分化制御を担うゲートキーパーとしての役割を有する構造であることが示唆された。よって本研究結果は、BTB機能の破綻が造精機能障害の一因となり得ることを強く支持する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、MRLマウス精巣の熱抵抗性に関与する責任遺伝子座を有するコンジェニックマウス(B6.MRLc1、B6.MRLc11、B6.MRLc1c11)の作出が完了した。そのため、来年度はこれらマウスの高温曝露処置後の精巣におけるBTBの精細管内腔隔離能と減数分裂の進行との関連を解析し、BTBレスキュー因子の検索を行う。
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