研究課題/領域番号 |
12J02141
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
早川 昌志 神戸大学, 生物学科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 原生動物 / 細胞内共生 / クロレラ / シンクロロソーム / 電子顕微鏡 / 有中心粒太陽虫 / ミドリゾウリムシ |
研究概要 |
平成24年度は、大きく分けて、(1)細胞内共生クロレラ胞(シンクロロソーム)を持つ生物の微細構造の比較研究の体系化、(2)シンクロロソームを持つ新規有中心太陽虫の発見と形態観察、(3)ミドリゾウリムシにおけるdenovoトランスクリプトーム解析の為のサンプル調整の3つの研究を実施した。以下にそれぞれの詳細について記述する。(1)ミドリマヨレラ、ミドリゾウリムシ、ミドリラッパムシ、グリーンヒドラの4種について、凍結置換固定法による詳細なTEM観察により、シンクロロソームの普遍的構造および種特異的構造と、シンクロロソームと他のオルガネラとの相互作用について、前年度までの研究よりも更に詳細に明らかにし、シンクロロソームの細胞内における挙動モデルを構築するまでに至った。この結果は、今後、当研究課題における「新規細胞内共生系の構築」への基盤研究となる。(2)野外サンプリングにより、単細胞性のミドリハリタイヨウチュウを発見・培養確立し、有中心太陽虫類の分類形質である鱗片について、微細構造による解析を行った結果、これまでに未報告であることを明らかにした。今後、当研究課題における有用な生物材料となることが期待される。(3)当研究課題において重要な生物材料であるミドリゾウリムシは、遺伝子レベルでの研究がほとんどされておらず、このことは、当研究課題を遂行していく上で大きな障害となる。そこで、次世代シーケンサーを用いたミドリゾウリムシのde novoトランスクリプトーム解析を実施することにした。平成24年度では、次世代シーケンサーによる配列取得用に、ミドリゾウリムシおよび共生クロレラを排除した無色ミドリゾウリムシの2サンプルを調整し、企業委託まで行った。平成25年度には、配列データを取得予定であり、今後の当研究課題実施における有用なツールとなることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の最終目的である、人工的に細胞内共生系を新規構築の為には、既知細胞内共生生物の解析と、さまざまな系統の細胞内共生生物を収集し,実験材料とする必要がある。共生生物の解析は、電子顕微鏡による比較研究によって大きく前進し、新規の共生生物も得ることができた。今後の人工共生系を構築していく研究において重要な足がかりができたものとして、おおむね順調に研究は進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
シンクロロソームを持つ生物の比較研究、シンクロロソームを持つ生物の収集を、引き続き行っていく。同時に、新規共生系構築の為の実験系を確立することを目指す。また、平成24年度より着手しているミドリゾウリムシにおけるトランスクリプトーム解析も進め、本研究課題に応用できるようにする。
|