研究課題/領域番号 |
12J02169
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲間 絢 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ドイツ・ゴシック / ゴシック / 彫刻 / 聖母マリア / 女性の霊性 / 騎士文化 |
研究概要 |
本研究は、ドイツ・ゴシックにおける聖母表象を、西洋キリスト教世界において聖母表象の原典として根底にありながら、未だ十分な研究がなされていないといえる、婚礼の神秘主義による旧約聖書の《雅歌》の背景との関連性から探るものである。とくに、ドイツ・ゴシック彫刻において、そのシュタウフェン王朝の美術における婚礼の神秘主義における花嫁、花婿としての聖母子像の解釈、地域性は、フランス・ゴシックにおける聖母図像である《聖母戴冠》の成立の背景とともに、雅歌の背景の重要性を強く示唆している。申請者は、修士論文において、13世紀中葉に制作されたバンベルク大聖堂の彫刻群において、騎馬像と聖母像を中心とした雅歌の夫婦像のイメージ・プログラムとして革新的な考察による解明の試みを行った。宮廷文化の影響、とくに、シュタウフェン王朝における騎士文化と宮廷恋愛詩の背景、ゴシック美術における視覚性のダイナミックな表象、当時の幻視の流行とキリストの人間性を重視する宗教性が関わっている。ハンス・ベルティング、マイケル・カミーユ、ジェフリー・F・ハンバーガー、ブルーノ・ベルナーなどによる、イメージ人類学的研究を引き継ぎ、伝統的な美術史観では達成されなかった中世美術の核心の解明を目指す。当時の聖母表象と女性性を規定した枠組みの根本的背景としての「雅歌」の表象―を証明するにあたり、その枠組みと諸相を礼拝美術としての彫像を中心として、祈祷書、典礼書などの女性表象の文脈とともに調査する。その際、ゴシック美術にとって独特な視覚性の関与の分析・考察が必須となる。 とくにバンベルク工房系列の作品を中心として、ドイツ語圏のゴシック美術において、主要な芸術形態であり続けた彫刻上の表現における聖母と女性性の表象の特色を包括的に把握し、その特徴を浮き彫りにし、同時に、貴族・騎士階級という教会の特別な関心を向けられた観者へのイメージ・プログラムの創作において作用した宮廷文化の背景も探りつつ、歴史的文脈を顧慮し本研究の説の実証を目標とする。本年度は、バンベルク工房とその後継工房の作品を中心に、バンベルク、ナウムブルク、フライブルク、シュトラスブルクなど、ドイツ・ゴシックの代表的な作品のある各都市で、ドイツにおける中世彫刻の現地調査を行った。芸術作品の見学調査、論証のための史料の発掘に向けて、聖堂付属博物館、図書館、そして、中世美術の資料について、ドイツでも有数の所蔵を誇る、ニュルンベルクの国立ゲルマン博物館付属図書館、ミュンヘンの中央美術史研究所など、主要図書館において資料調査した。とくに旧バンベルク大聖堂付属神学校である国立バンベルク図書館では、貴重な写本史料を中心に、中世彫刻と雅歌の背景を探った。本年度は、京都大学で開催された、第63美学会全国大会の口頭発表にて、その成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツ、フランスにおける、在外調査における作品の調査と資料収集において、成果があったとともに、その後の考察において、学会発表においてその成果を反映させ、新たな論を展開することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらなる史料の発掘に向けて、在外調査の範囲を広げるとともに、より大きな枠組みにおいて、かつ、個々の事象の深い考察とともに、作品の分析を行う。
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