研究課題/領域番号 |
12J02169
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲間 絢 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ゴシック / 彫刻 / 聖母マリア / 光学理論 / 雅歌 / バンベルク大聖堂 / ドイツ中世 / フリードリヒ2世 |
研究概要 |
当該年度は、ドイツを中心とする現地調査、および、国内の学会や国際会議において、これまでの研究成果の発表を重点的に行った。 まず、現地調査については、主に、ドイツ本国でも有数の中世彫刻研究の蓄積がある、「ミュンヘン中央美術史研究所(Zentralinstitut für Kunstgeschichte München)」の付属図書館において、バンベルク大聖堂を始めとするドイツ・ゴシック彫刻、中世のイメージ論、ゴシック彫刻の聖母マリアの図像における『雅歌』の礼拝などについて、資料調査をした。本研究所では、学術プログラムにも参加し、中世美術を始めとする研究発表の議論に参加するなどして、調査のみならず、専門家の助言を受けつつ、日々研鑽してきた。 研究成果の発表については、主に次のようなテーマに分けて行った。美術史学会において、バンベルク大聖堂の13世紀のゴシック彫刻群のプログラムにおいては、扉口から聖堂内部まで『雅歌』の花嫁神秘主義の表現が根底にあるという美術史学的考察を発表した。西洋中世学会においては、13世紀のゴシック彫刻における『雅歌』の影響を、フランス・ゴシックの「聖母戴冠」図像、および、ドイツ・ゴシックにおける聖母子坐像や様々な図像において考察した。国際科学史会議では、バンペルク大聖堂の彫刻群について、後援者であった、神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ2世の宮廷における光学理論の研究の視覚性の問題から考察した。国際美学会では、光学理論を参照し宮廷文学で流行したメタファー『雅歌』の「愛の矢」について、花嫁神秘主義の花婿と花嫁の眼差しの交換の問題から、ゴシック美術の視覚性とともに考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、国内学会や国際会議において、研究発表を積極的に多くの機会で行うことができた。国内外のさまざまな領域の専門家たちとの議論を通して、広い視野から自らの研究テーマを考察することを学んだ。また、ミュンヘン中央美術史研究所において、多くの資料を収集することができ、今後の考察におおいに活かすべく、それらを精読した。
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今後の研究の推進方策 |
旧バンベルク大聖堂付属神学校図書館における『雅歌』註解の吏料の調査をより緻密に行うため、アレクサンドリアのオリゲネスやクレルヴォーのベルナルドゥスの『雅歌』註解など11世紀から14世紀の当図書館の所蔵する史料について、『雅歌』との関連を、聖母マリアや聖アンナなど聖女の典礼との関連をも含めて、より厳密に調査していくことが今後重要となると思われる。また、ドイツ・ゴシックにおける「聖母戴冠」図像の系譜からも、バンベルク大聖堂の彫刻群を詳しく考察していきたい。
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