研究課題/領域番号 |
12J02180
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
牧口 孝祐 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 有機分子触媒 / 開環重合 / β-ブチロラクトン / 不斉重合 |
研究概要 |
生分解性ポリマーの合成方法は微生物合成法と化学合成法に大別される。中でも代表的な微生物合成ポリエステルであるポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)に関する研究は盛んである。しかし、微生物合成法ではポリマー鎖末端の構造が明確なP3HBは得られない。一方で、化学合成では末端の構造を制御して官能基を導入することで、物性制御や改質のための共重合を行える。また、生分解速度の調整にはR/S比の変更も有効な手段である。そこで本研究では、P3HBの精密合成の達成を目的として、金属を含有しない有機触媒を用いることとした。 本年度は重合の制御ならびにポリマー中のR/S比の制御の達成を目的としており、まずモノマーであるβ-ブチロラクトン(β-BL)を重合可能な触媒の探索を行った。その結果、スーパーブレンステッド酸の一種であるトリフリルイミド(HNTf_2)を触媒として用いることにより、β-BLのみならず様々な環状エステルの重合は可能であることが判明した。また、開始剤として官能基を有するアルコールを用いることに'より、末端官能基化P3HBの合成も可能であった。末端官能基化ポリマーは官能基を足掛かりとして他種ポリマーとの結合や構造変化を簡便に行うことができるため、非常に有用である。一方でR/S比の制御の前段階として、軸不斉を有するビナフチル基を導入したリン酸触媒を用いて重合を行った。その結果、重合は進行したものの分子量分散度は広い値であり、SECトレースも多峰性であった。以上のことより、R/S比の制御に関しては改善の余地があるもののスーパーブレンステッド酸を用いることでβ-BLの重合は可能であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった重合の制御を達成したが、R/S比の制御に関しては関しては進展しなかった。一方で次年度の目標の一部である末端官能基化ポリマーの合成を先立って達成した。今後は触媒の変更などによって不斉重合の検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
β-BLの重合にHNTf2の使用が有効であることが判明したため、今後はイミド部位を有する不斉触媒の使用や、ビナフチルリン酸へ置換基を導入するなどして触媒の活性を高め、重合の制御ならびにR/S比の制御を検討する。また、物性改質を見据えて適用可能なモノマー範囲も拡大する予定である。 現時点ではβ-BLの不斉重合は困難であるため、不斉を有するモノマーの一種であるラクチドの不斉重合に関しても試みる予定である。すでにラクチドの重合に関してはリン酸を触媒に、アミンを助触媒に用いることで進行することを確認しており、種々の環状エステルの重合に対しても有効であると考えられる。今後は助触媒を添加したβ-BLやラクチドの不斉重合に関しても検討を行う。
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