研究課題/領域番号 |
12J02195
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
二文字屋 脩 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ノマディズム / 不合理な遊動 / 狩猟採集民 / ムラブリ |
研究概要 |
本研究の目的は、タイ北部に暮らすムラブリを対象に、ノマディズムの社会文化的意味とそのダイナミックな様態を明らかにすることである。とくに本研究では、狩猟採集活動に対して副次的な位置づけにあったノマディズムのなかでも、経済的・生態学的要因からでは説明が困難な「不合理な遊動」とも言える実践に注目することで、社会文化論的視座から新たな解釈枠組みの提示を目指している。 そこで平成二四年度は、調査対象であるムラブリについて包括的に理解を深めるため、タイの研究機関にて入手可能な文献資料を収集し、分析をした。これにより、タイ北部のほぼ全域がムラブリの遊動範囲であったこと、そして大規模な森林伐採や共産党ゲリラによる民族解放戦線といったタイ北部の政治経済的情勢から、ムラブリの遊動範囲が徐々に失われていったことなどが明らかになった。 また、今日ムラブリが定住生活を送る定住村での長期にわたる参与観察から、遊動の形態がバンドを中心としたものから個人を中心としたものへと変化していること、そしてこのような現状がタイ政府や近隣農耕民との政治経済的なインタラクションや生活様式の変化の所産であることが明らかとなった。とくに参与観察を通じて、「不合理な遊動」とも言える、一見すると経済的なメリットがない、定住村間や村内での頻繁な居住地の変更についてデータを収集することができ、聞き取り調査などから、そうした日常的に行われる遊動実践の社会文化的意味を探るとともに、こうした遊動実践によって生み出されるムラブリの社会組織が、不安定に見えながらも個人を単位とした社会成員相互の社会的紐帯を維持する重要な役割を担っていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、交付申請書に記した研究目的と研究方法に沿って研究を進めることができたと考えている。とくにタイ国内の研究機関での文献資料の収集や、調査対象であるムラブリと円満な関係性を築いて調査を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は文献資料の収集や長期の参与観察に徹したが、得られたデータを分析する中で未だ不十分なデータがあることも明らかとなったため、次年度は不足しているデータを補うべく、継続して資料の収集と参与観察と聞き取り調査によるデータの収集を行う必要がある。
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