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2013 年度 実績報告書

アルカリ可溶セルロースの新しい食材領域を目指した相互作用の解明と構造制御の方法論

研究課題

研究課題/領域番号 12J02232
研究機関横浜国立大学

研究代表者

宮本 ひとみ  横浜国立大学, 工学研究院, 特別研究員(PD)

キーワード再生セルロース / アルカリ可溶セルロース / 食品 / 分子シミュレーション / 構造形成メカニズム / 染料
研究概要

水酸化ナトリウムを溶媒とする, セルロースの新しい溶解法の確立により, セルロース成型体は世界で初めて法律的に認められ, 食品展開できるようになった。しかし, 法律的に可食なセルロースは, 異物感を感じるため食感的には可食ではない。現在までに, セルロースの構造形成の初期に形成される疎水性の相互作用により集合したセルロース分子シートを乱すことで最終的なセルロースの結晶性が低下し, これが食感改良に繋がるという, 構造設計のための基本的な考え方が分かっている。しかし, なぜ分子シートが乱れるのかという食感改良に関する構造制御の方法論は明らかではない。そこで, 本研究の目的は, 「セルロースとその周辺物質との相互作用を周辺物質の観点, 固体構造の観点より明らかにすること」である。どのように物質はセルロースに近づき影響を及ぼすのかを, 相互作用という観点で解明し, 構造制御の方法論を見出し, 望ましい構造を設計する予定である。まず, 1年度目の報告において, 銅アンモニア溶液にセルロースを溶解させ, 再生したものは, どの染料(直接, 酸性, 塩基性, アゾ)を添加した系においても, セルロースの結晶性が低下しないことを報告した。これは, 比較的濃いセルロース濃度では, 再生セルロースの基本的な特徴, 構造とされているファンデルワールス力などの疎水性の相互作用により集合した分子シート構造を溶液中で維持している可能性があること, つまり, セルロースが銅アンモニア溶液中で分子分散している可能性が低いことを示唆した結果である。一方, 超臨界水で溶解したセルロースに染料を添加するとセルロースの結晶性は極めて低下した。またX線解析より低角側の立ち上がりに違いがみられた。これはセルロースと染料の凝集構造に違いがみられることに起因する。この結果より超臨界水中では, セルロース濃度が比較的高くても, 分子シート構造は維持しておらず, 分子分散している可能性が高いことが示唆される。つまり, 食品展開するためにセルロースの結晶性を低下させるためには分子シートの状態での溶解ではなく, セルロース鎖を分子分散させることが必須である。また, セルロースと染料のMDシミュレーションより, OH/0, NH/0, CH/π, CH/0, OH/Nなどの相互作用が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は, 「セルロースとその周辺物質との相互作用を周辺物質の観点, 固体構造の観点から明らかにすること」である。本年度は, セルロースの固体構造の観点からの検討を行った。比較的セルロース濃度の高い銅アンモニア溶液や水酸化ナトリウム水溶液中ではセルロース分子シート構造が維持されている可能性, そして分子分散した場合の分子鎖の凝集構造を実験とMDシミュレーションで明らかとできた。固体構造では超臨界に溶解する結晶解離メカニズムを明らかとすることができた。

今後の研究の推進方策

アルカリ可溶セルロースの新しい食材領域を目指した相互作用の解明と構造制御の方法論を明らかにするためにセルロースの周辺物質の観点・固体構造の観点から研究を行ってきた。最終年度は総合的にセルロースの構造制御の方法論を明らかにする。再生セルロースの結晶性をコントロールするには溶解状態と構造形成の初期の分子シート構造が極めて重要となることが分かった。水酸化ナトリウム水溶液中ではセルロース分子シート構造で溶解している可能性が高い。この裏付けを行うためにクライオTEMを用いて観察する予定である。また, 溶解状態の解明するため, イオン液体などの溶解におけるメカニズムと分子シートの有無についても検討を行う予定としている。また現在シミュレーションを行っているセルロースと染料の相互作用や染料によるセルロースの凝集阻害メカニズムを明らかにする予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Influence of dyestuffs on the crystallinity of a bacterial cellulose and a regenerated cellulose2014

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Miyamoto, Masaya Tsuduki, Mariko Ago, Chihiro Yamane, Mitsuo Ueda, Kunihiko Okajima
    • 雑誌名

      Textile Research Journal

      巻: 84 ページ: 1147-1158

    • DOI

      10.1177/0040517513517960

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ボールミル処理により調製した羊毛の高次構造と染着性, Structure and Dyeing of Wool Treated by a Ball-Milling Method2014

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Miyamoto, Takashi Tsuritani, Mariko Ago, Chihiro Yamane, Mitsuo Ueda, Kunihiko Okajima
    • 雑誌名

      繊維学会誌

      巻: 70(NII論文ID(NAID):40019944823) ページ: 54-59

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural changes in the molecular sheets along (hk0) planes derived from cellulose I_β by molecular dynamics simulations2013

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Miyamoto, Chihiro Yamane, Kazuyoshi Ueda
    • 雑誌名

      Cellulose

      巻: 20 ページ: 1089-1098

    • DOI

      10.1007/s10570-013-9915-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Folded-chain structure of cellulose II suggested by molecular dynamics simulation2013

    • 著者名/発表者名
      Chihiro Yamane, Hitomi Miyamoto, Daichi Hayakawa, Kazuyoshi Ueda
    • 雑誌名

      Carbohydrate Research

      巻: 379 ページ: 30-37

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ab initio studies of the structure and the interaction of cellulose III_I crystal2013

    • 著者名/発表者名
      Kazuyoshi Ueda, Tetsuya Ishikawa, Hitomi Miyamoto, Daichi Hayakawa
    • 雑誌名

      MRS Online Proceedings Library

      巻: 1554(現在はオンライン発行中のためページ数未定)

    • DOI

      10.1557/op1.2013.848

    • 査読あり
  • [学会発表] Molecular dynamic simulation on dissociation behaviors of various crystalline celluloses treated by hot-compressed water2014

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Miyamoto, Rosnah Abdullah, Hayato Tokimura, Daichi Hayakawa, Shiro Saka, Kazuyoshi Ueda
    • 学会等名
      The international symposium organized by Institute for chemical research-The science and technology of smart materials-(ICRIS'14)
    • 発表場所
      Kyoto, Japan
    • 年月日
      20140310-12
  • [学会発表] Cellulose/starch blend films prepared from aqueous sodium hydroxide solution as new food materials with characteristic features in comparison to other edible films2013

    • 著者名/発表者名
      Hitomi Miyamoto, Chihiro Yamane, Masaharu Seguchi
    • 学会等名
      Starch Round Table
    • 発表場所
      Albuquerque, USA
    • 年月日
      20130926-28
  • [学会発表] Abinitio studies of the crystal structure of cellulose III2013

    • 著者名/発表者名
      Kazuyoshi Ueda, Tetsuya Ishikawa, Hitomi Miyamoto, Daichi Hayakawa
    • 学会等名
      2013 MRS Spring Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      20130401-05
  • [学会発表] 水和セルロースおよびアルカリセルロースの分子動力学シミュレーション2013

    • 著者名/発表者名
      宮本ひとみ, 山根千弘, 上田一義
    • 学会等名
      神奈川県ものづくり技術交流会
    • 発表場所
      海老名
    • 年月日
      2013-10-25
  • [学会発表] 第一原理計算によるセルロースIII_I結晶構造解析と相互作用の評価2013

    • 著者名/発表者名
      石川哲也, 宮本ひとみ, 早川大地, 上田一義
    • 学会等名
      神奈川県ものづくり技術交流会
    • 発表場所
      海老名
    • 年月日
      2013-10-25
  • [学会発表] セルロース結晶構造と加水分解機構の関係の分子動力学シミュレーションによる検討2013

    • 著者名/発表者名
      上田一義, 時村隼人, 宮本ひとみ, 早川大地, Rosnah Abdullah, 坂志朗
    • 学会等名
      セルロース学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2013-07-18
  • [学会発表] 分子動力学シミュレーションから推察した水酸化ナトリウム水溶液へのセルロースの溶解メカニズム2013

    • 著者名/発表者名
      宮本ひとみ, 上田一義, 山根千弘
    • 学会等名
      セルロース学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2013-07-18
  • [学会発表] セルロース結晶の膨潤と脱水に関する分子動力学シミュレーション2013

    • 著者名/発表者名
      宮本ひとみ, 山根千弘, 上田一義
    • 学会等名
      セルロース学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2013-07-18
  • [学会発表] 第一原理計算によるセルロースIII_I結晶構造解析と相互作用の評価2013

    • 著者名/発表者名
      石川哲也, 宮本ひとみ, 早川大地, 上田一義
    • 学会等名
      セルロース学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2013-07-18
  • [学会発表] イオン液体・超臨界水下におけるセルロースの溶解状態に関する分子動力学シミュレーション2013

    • 著者名/発表者名
      早川大地, 上田一義, 宮本ひとみ, 山根千弘, 堀井文敬
    • 学会等名
      セルロース学会
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2013-07-18

URL: 

公開日: 2015-07-15  

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