研究概要 |
p92鋼の多軸応力条件下における寿命のごく初期からの損傷形態の実験的把握を目的として,C(T)試験片および環状切欠き試験片を用いて,ある寿命比で試験を中断する高温クリープ途中止め試験を行った.その後,レーザー顕微鏡を用いて各途中止め試験片のボイドやき裂等の損傷を観察した.その結果,C(T)試験片の厚さ方向の中心面ではき裂が周期的な凹凸を示すことが示された.一方,環状切欠き試験片ではき裂が破断直前まで発生せず,損傷はボイド主体であることが明らかになった.そこで,環状切欠き試験片におけるボイド形成を定量評価するためにボイド面積率の計算を実施し,ボイド分布の経時変化を明らかにした.また,各途中止め試験片に対してFE-SEM/EBSD-OIM法による局所的結晶方位差解析を行った.損傷の評価指標として局所結晶方位差を表すKAMと粒内の結晶方位の勾配を表すGRODを使用した.その結果,環状切欠き試験片において,KAMはクリープ損傷の進行とともに低下するが,GRODは寿命の前半でピークを持つ特性を示すことが明らかになった.さらに,クリープ損傷領域における硬度を測定し,硬度分布の経時変化を明らかにした.以上の結果は,P92鋼の多軸応力下での損傷挙動を実験的に明らかにするものであり,実機で起こりえる損傷に対する基礎的知見を与える非常に重要なものである. また,多軸応力下におけるクリープ損傷メカニズムの解明を目的として,3次元有限要素法による応力解析ならびに3次元差分法による空孔拡散解析を行う.本年度は,これまでの2次元拡散解析プログラムを3次元に拡張し,高度化を行った.また,解析プログラムが正常に作動することを確認した.
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