インフラトンの正体を解明する上で、重要となる長波長非線形揺らぎの進化について、特に三点相関量の解析の研究を行ってきた。具体的には、インフレーション中にインフラトンの音速が時間変化することで生じる興味深い三点相関(Non-Gaussianity)を示す現象モデルの提案をした。2013年に公開されたPLANCK衛星のCMBデータによると、Non-Gaussianityは大きさとしては極めて小さく、原始揺らぎはほぼガウス分布に従うことが明らかとなった。しかし、波数空間で細かくみると局所的なNon-Gaussiantiyは依然観測から許されている。この音速が変化するモデルは二点相関量の解析で既に、ある波数領域に局在したピークのあるスペクトル(featureという)を示すことがわかっていたので、この三点相関量の解析ができると、将来的な観測データの詳細解析から波数空間で同様の特徴的なスペクトルを見つけることで、インフレーションの物理に大きな進展を与えることができると考えられる。 研究によってインフラトンの音速が変化する場合に大きなCMB featureを示す可能性があることが明らかとなった。従来は、その変化が急激な限定的な状況のみの解析しか行えなかったが、我々の定式化を用いることで、より一般的な状況にも応用することができた。 また観測面でのデータ解析の研究も同時に進めており、現在ケンブリッジ大学のPLANCKチームと共同研究をして、PLANCKデータを用いて局所的なCMB featureがdetectできるかの研究を行っている。通常、三点相関は波数空間で三角形の形を決めて、Non-Gaussianityの定量化を行っていたが、これを仮定せずにNon-Gaussianityを直接求める手法をとっている。この解析により、波数空間のある領域においてピークを示す期待していたfeatureが確認され大きな成果を得た。
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