研究課題/領域番号 |
12J02251
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉永 泰三 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 光触媒 / 水完全分解反応 / 助触媒 / 酸化マンガン / ナノ粒子 / コバルトドープ / 水酸化 / 固溶体 |
研究概要 |
水分解光触媒に助触媒を担持する際、既存の助触媒担持法では助触媒ナノ粒子同士の凝集が避けられず、光触媒活性の向上や活性を左右する因子解明が困難であった。液相精密合成した助触媒ナノ粒子の高分散担持によって、ナノスケールでの助触媒の精密制御が可能となり、大幅な光触媒の活性向上が期待できる。本研究では、世界最高活性を誇る光触媒の活性を、液相合成によって精密に構造制御されたナノ粒子を用いて大幅に向上させることを目的とする。 GaN:ZnOは873Kでのポスト焼成処理により、その活性が大幅に向上することがわかっている。本年度はまず、このポスト処理を施したGaN:ZnOに対し、酸素生成助触媒として、粒径制御に成功しているMnO(Mn_3O_4)ナノ粒子を担持し、光触媒活性の粒径・担持量依存性を明らかにした。その結果、酸素生成助触媒としては粒径9nmのMn_3O_4ナノ粒子を担持した時に最も高い活性が得られ、粒径変化による活性の大幅な向上は期待できないことが示唆された。酸化マンガンと同様に、酸化コバルトが酸素生成助触媒として働くことが近年活発に報告されている。そこで次に、新規酸素生成助触媒としてCoドープ酸化マンガンナノ粒子を合成し、光触媒上へ高分散担持した後、水完全分解光触媒活性のCoドープ率依存性について検討した。粒径約9nmのCoドープMnOナノ粒子(Coドープ率0-40%)の液相合成に成功し、Coドープ率0-40%の間で水完全分解光触媒活性評価を行った結果、Coドープ率が20%の時に最も高い活性を示し、Coドープ酸化マンガンナノ粒子が有用な酸素生成助触媒となることが示唆された。Coドープによって水の酸化触媒としての特性が向上した理由として、GaN:ZnOからCoドープ酸化マンガンへの正孔移動過程が起こりやすくなったこと、水分子および酸素分子のCoドープ酸化マンガンに対する吸着エネルギーが変化し水の酸化速度が向上したことが考えられるが、詳細については現在調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日々熱心に研究に取り組んでいますが、本年度は研究室異動の影響もあり、研究内容は期待していたほど光触媒活性の向上に繋がらず、予定していたほどの進展はありませんでした。来年度、研究を大きく進展させるべく、最大限努力したいと思います。
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今後の研究の推進方策 |
増強光電場によるGaN:ZnO光触媒の活性向上を目指す。Agナノ粒子として、LSPR波長を広く調節することが可能なAgナノキューブやナノロッドを用いる。次に、反応条件を変化させSiO_2シェルの厚さを制御する。この粒子をGaN:ZnOと混合し、先述の手法により高分散にGaN:ZnO上へ担持後、Ag/SiO_2コアシェルナノ粒子同士が光触媒表面で凝集しない程度の温度で焼成処理し、SiO_2シェルをGaN:ZnOに接合させる。GaN:ZnO上へ高分散にAgナノ粒子が担持されていること、Agナノ粒子とGaN:ZnO間の接触がないことをTEMによって確認する。次に、光触媒活性におけるAgナノ粒子の担持量依存性やSiO_2シェル厚依存性を検証する。最後に本手法をzスキームへ展開させ汎用性を示し、光触媒活性の記録更新を目指す。
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