本研究の目的は、無機ナノ粒子と光触媒の機能複合化により、水完全分解用光触媒の世界最高活性を達成することである。具体的には、水素生成助触媒として粒径・組成比を精密に制御したRh_<2-y>Cr_yO_3複合酸化物ナノ粒子を、酸素生成助触媒として精密粒径制御したMn_3O_4ナノ粒子を液相合成により合成し、それぞれを半導体光触媒上へ高分散担持することによって光触媒活性の記録更新を目指す。 本年度は、水完全分解光触媒の酸素生成助触媒として、昨年度までに高い活性を有することが明らかになったMn_3O_4ナノ粒子のMn(II)をCo(II)に置換したCo_xMn_<3-x>O_4ナノ粒子に焦点を当てた。植物の光合成酸素発生サイトがCa^<2+>を含む酸化マンガンクラスターであることから、Mn_3O_4ナノ粒子への異種イオンの導入が触媒活性向上に寄与すると期待した。具体的には、Co置換率0~40%のCo_xMn_<3-x>O_4ナノ粒子をSrTiO_3光触媒へ担持し、水素生成助触媒(Rh/Cr_2O_3ナノ粒子)を光電着した後、水完全分解光触媒特性評価を行った。その結果、Co置換率の増加に伴い水完全分解活性が上昇し、Co置換率40%の時に無担持の場合と比較して2.6倍高い活性が得られた。さらに、Co_xMn_<3-x>O_4ナノ粒子を担持したBiYO_4光電極の光電流測定を行ったところ、Co置換率の上昇に伴い光電流値が上昇し、光触媒の安定性も増すことが明らかとなった。これらの結果は、Co置換Mn_3O_4ナノ粒子がMn_3O_4ナノ粒子よりも酸素生成助触媒として効果的に働くことを示している。
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