研究概要 |
今年度は非腺形光学の分野において現れる連立非線形シュレディンガー方程式系に対する定在波解の性質および完全非線形楕円型方程式に関する固有値問題について研究を行った. 連立非線形シュレディンガー方程式系に関しては,2つ以上の制限条件の下,エネルギー汎関数を最小化する列の取り得る挙動を明らかにした.この最小化列の挙動の分類は基底状態解の軌道安定性と深く関わっており,今回得られた結果により基底状態解の安定性を示すことができた,このことは,先行研究のコンピュータを用いた数値計算の結果を厳密な数学的議論により正当化できたと言える.これは本研究の大きな目的の1つであった.またさらに本研究では,1次元,2次元,3次元における最小化列の挙動の本質的な差異を考察することができた.これらのことを踏まえると本研究は意義深いものであり,重要なものになったと言える。 .完全非線形楕円型方程式の固有値問題に関しては,前年度から続けている研究であり,今年度はディリクレ境界条件だけではなく,ノイマン境界条件やロバン境界条件を含むような一般的な境界条件下において固有値,固有関数の列を構成した.また,高次元のときは対称性を課した下で,上で見つけた以外の固有値,固有関数がないことも示した.さらに第一固有値に関する様々な特徴付けをすることにも成功している. 完全非線形楕円型作用素は,最適制御等の分野において現れ固有値問題を解析することは,非線形項を含んだ方程式を考察する上で大変重要な役割を果たすと思われる.実際,プッチ作用素等に関しては既に先行研究において固有値問題は重要な役割を果たしている.このことを鑑みれば本研究の結果は意義があるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来は連立非線形シュレディンガー方程式系の特異摂動問題に関して考察する予定であったが,第2年目の研究課題であった非線形光学の分野において現れる異なる連立非線形シュレディンガー方程式系に関する解析が思いの他に進展した.その分,特異摂動問題に関する研究は進展しなかったが,第2年目の課題を終えることができたため研究は順調に進展しているとして良い.
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今後の研究の推進方策 |
まずは非局所的な効果を持つ非線形キルヒホフ方程式に対する特異摂動問題について研究を行う.はじめに定数係数の場合の最小エネルギー解の存在,その構造,性質を研究し,次に特異摂動問題について解析を行う. 次に,上の問題と平行して幕乗型非線形項を持つPucci作用素に関する方程式の解析を行う.そのために,まず外力項付きPucci作用素の方程式の解析を行い,写像度の理論を用いて非線形方程式の解を構成する. さらに本来第一目に計画をしていた連立非線形シュレディンガー方程式系に関する特異摂動問題に移る,この問題の場合も上と同様で,まずは定数係数の場合の解構造が重要となるため,このことについて解析を行う.その後に,凝集解の構成に移りたいと考えている.
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