本研究では、可視域から赤外域の広域な波長可変性を有する再構成可能アドドロップ多重化装置を発展させ、広域な可変波長分割多重通信システムの構築に向けた波長可変性、帯域可変性および多峰性を併せ持ったスペクトル制御を可能にする技術の確立を目的としている。本研究目的の達成に向け、本年度は回折格子のアポダイゼーションによる回折効率の向上、スペックル光による帯域幅制御技術の検討ならびに多重回折格子による多峰性動作の検討を行った。まず、動的な回折格子の形成過程を考慮したビーム伝搬法を開発した。これにより、実際のデバイスサイズと同程度の解析領域を確保することが可能となり、屈折率の変調量や動的な分布、吸収損失といった材料の特性を総合的に考慮した実用的な評価が可能となった。次に、解析的に回折効率を評価することで実用化に向けて要求される材料スペックを示した。さらに、帯域幅の制御技術の動作原理について明らかにした。 上記研究計画に加えて、本研究の応用技術を新たに提案し、2件の特許を申請した。そのうちの1件は、新規通信方式を提案しており、これまでにない全く新しい多重伝送技術を提供している。この技術は従来の多重伝送技術と併用できるため、飛躍的な通信容量の増大が望めるだけでなく、外圧などによるさまざまシステム変動に対する高いロバスト性が期待できる。もう1件は、本研究内容を医療および光ストレージの分野に応用した技術を提供している。これにより、厚い散乱物体の内部構造を3次元情報として瞬時に取得することができるようになり、これまで難しかった皮膚組織の深部の3次元像をX線の照射なしに鮮明に映し出すことが可能となる。また、この技術を3次元光記録技術に応用することで、記録媒体の厚さ方向への多重記録および再生技術を確立することができるようになり、大幅な記録容量の増大が期待できる。
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