研究課題
Be/X線連星の観測的研究については、Be/ガンマ線連星系の研究を中心に以下の5つのことを行った。(1)Be/ガンマ線連星系の内、LS I+61°303とHESS JO632+057と呼ばれる2つの系について、コンパクト天体の正体やBe星ガス円盤との相互作用の性質、Be星ガス円盤の配置を解明する為に、岡山天体物理観測所188㎝望遠鏡やカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡を使って分光・偏光分光モニター観測を実施した。(2)Be/X線連星におけるBe星ガス円盤の構造の変化とX線活動に関するシナリオを検証する為に、II型アウトバーストを起こしたGX304-1のBc星ガス円盤の様子をVLTI望遠鏡で観測し、Be星ガス円盤が非常に発達していることを発見した。(3)昨年度に引き続きAO535+262のモニター観測を行い、X線で増光した前後にBo星ガス円盤の成長に伴う輝線の変化を捉えた。(4)Be星ガス円盤を伝搬する『1本腕振動』の性質を理解する為に、いくつかの単独Be星のHα輝線の様子を調査した。(5)全天X線監視装置MAXIで捉えた、X線連星における増光現象の可視光フォローアップ観測を、広島大学かなた望遠鏡可視1露出型偏光撮像器(HOWPol)を用いて行った他Be/X線連星、Be/ガンマ線連星のモニター観測を継続して行った。可視赤外線観測装置の開発については、可視近赤外同時測定カメラ(HONIR)の開発として以下の5つのことを中心に行った。(1)光学素子交換ホイール(以下ホイール)を動かすモーターの励磁状態を監視する為に回路の設計から製作を行った。(2)ホイール用のモーターの幾つかが劣化してきた為、新たに購入した予備モーターを冷却下でも使用できるように改良を行った。(3)HONIRで偏光観測ができるように、半波長板駆動機構の開発を行った。(4)半波長板駆動機構の追加に伴い、モーター駆動用のソフトウェアの改良、並びに観測がスムーズに行えるように機能を追加した。また、観測を支援するツールの開発も行った。(5)試験観測を行ない、装置の姿勢変化による歪みなどの性能評価を行った。現在も偏光観測を含めて試験観測・科学観測を行っている最中である。
2: おおむね順調に進展している
Be/ガンマ線連星の研究に重点を置いた分、Be/X線連星の研究について多少遅れた部分がある。可視赤外観測装置の開発についてはHONIRの開発が遅れた為に偏光モードの試験観測・評価はできなかったが、現在必要な開発を進めることができた。総合的に研究はおおむね順調に進行している。
Be/X線連星の観測的研究については、今年度は観測の遂行やデータ収集に重点を置いた為、来年度は適宜観測を継続しつつもこれまで取得した観測データの詳細な解析から論文化、研究発表に重点を置いて進めていく。特にBe/ガンマ線連星の2天体の解析を優先的に進める。可視赤外線装置開発に開してはIIONIRの試験観測を進め、必要なデータ解析、性能評価や開発を行う。HONIRの開発段階を考慮すると、中分散分光機能を追加するよりは現状での性能評価に集中することとする。また、HONIRを使ったBe/X線連星の研究も始める。
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Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 65 ページ: 論文番号77
10.1093/pasj/65.4.77
巻: 65 ページ: 論文番号83
10.1093/pasj/65.4.83