研究課題/領域番号 |
12J02297
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
樋口 貴俊 早稲田大学, スポーツ科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | バッティング / 視覚 / 運動スキル / 野球 |
研究概要 |
本研究ではまず、大学野球選手10名を対象とし、ボールが投じられてから一定時間後に透明な状態から不透明な状態へと変化する視界遮へいメガネを打者に装着させた状態で打撃を行わせた。視界遮へいの条件は3種類[条件1)ボールが投じられてから0.15秒で遮蔽、条件2)ボールが投じられてから0.30秒で遮蔽、条件3)遮蔽なし]で、各12試技でランダムな順番で合計36試技を各被験者に行わせた。その結果、実験では、視覚情報が与えられた時間と打撃の正確さの関係を検証した。その結果、条件1での打撃正確性は他の2条件に比べてインパクト時のバットの芯からボール中心までの距離が有意に大きいことが示された。しかし、条件2と条件3の間に有意な差は認められなかった。今回の実験で投じたボールの飛翔時間はおよそ0.45秒であったことから、打者の打撃正確性に影響を及ぼす視覚情報はボールが投じられてから0.30秒までの間の投球飛翔から得られるということが示唆された。 次に、熟練した打者の打撃中の眼球運動の特徴を把握するために実験(2)として、大学野球選手6名を対象に、投球(時速145km/h)を打つ際の頭部の動作と眼球の向きを計測した。。眼球の向きの変化に伴う記録電位の変化をもとに眼球の向きを記録する眼電図から算出した。解析では、ボール飛翔時間を3つに分けた(ボール投射後0.0秒~0.14秒、ボール投射後0.15秒~0.30、ボール投射後0.30秒~0.44秒)。その結果、眼球の水平方向の角速度は3つの区間で有意な差は認められなかった。一方、頭部の水平方向の角速度はボール投射後0.30秒~0.44秒の区間における速度が他の2つの区間よりも有意に高かった。この実験の結果から、熟練した打者が投球を視認する際には頭部や眼球を急激には動かさないということが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究では、本研究の主たる目的であった一流野球打者が投球を打つ際の視認動作の特徴と視覚情報の有用性を検証する実験を遂行し、信用性と再現性の高いデータ収集を行うことができたので順調に計画を遂行できていると判断した。また、学術論文や学会発表による研究成果の公表に向けた準備も進められている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、打者が打つボールの到達位置を安定させるためにピッチングマシンを用いていたが、より実際の打撃パフォーマンスの測定を行うために、熟練した投手に実験協力を依頼し、複数の球種が投じられる環境下での打者に視認動作や視覚情報の有用性を検証する必要がある。また、今後の課題としては、研究成果をより有効に野球選手へ還元するために、素早いフィードバックシステムの構築や、野球教室での講習会なども行っていく必要がある
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