研究課題
本年度は革新的な塗布型有機半導体電極の作製に向け、高移動度の有機半導体薄膜の作製手法を確立することを目指した。本研究においては、これまでに当研究室で確立されている溶媒に溶けやすい分子に適用可能な単結晶作製法に加え、溶媒に溶けにくい有機半導体材料に適用可能な新しい溶液を用いた手法で分子の配列を高度に制御した薄膜を作製することにより、溶液法をもちいて、高いキャリア伝導性能を発現させることが可能な分子系をこれまで以上に広げることを試みた。半導体材料としては、PentaceneやDNTTといったこれまでに溶液法の適用が困難であった有機半導体分子を用いた。に溶液法を適用可能にするため、これらの有機半導体の可溶性の前駆体を熱安定性に優れたイオン液体に溶解させ、イオン液体中で熱変換し、有機半導体をイオン液体の表面に析出させるという手法を新たに開発した。これにより、イオン液体の表面という固体などの表面と比較して自由度の高い系において有機半導体の分子を集合させることが可能になり、分子を規則正しく配列させることが可能になることが期待される。実際に、この手法を用いて有機エレクトロニクスへ応用に適したシート状の薄片状単結晶を得ることに成功した。実際に電界効果トランジスタを作製し得られた結晶のキャリア伝導性能を評価したところ、これまでに報告されている最高クラスの性能を有することが明らかにした。これらの成果は、高性能な塗布型有機電極に向けた研究のみならず、高移動度の塗布型有機半導体デバイスの開発・応用という観点においても大きなインパクトを持つ。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目標は高品質な有機半導体の薄膜の作製であった。最初に想定していたアプローチとは異なるとはいえ簡便に高い移動度を有する薄膜を作製する手法を確立したという点において、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、得られた高移動度の薄膜にドーピングを行い、高い伝導度を有する薄膜の作製を目指すとともに、現在得られている薄膜についてその構造や結晶性などについて詳細な評価をX線回折測定や分光学的な解析などの手法を用いて行うことで、今後の有機半導体の高配向化に関する研究の知見を深めていきたいと考えている。
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Organic Electronics
巻: 14 ページ: 1211-1217
10.1016/j.orgel.2013.01.004