研究概要 |
都市緑化の設計や計画の際に、樹木の日射遮蔽効果を熱・紫外放射環境として定量的に予測・評価するツールの開発に向け、昨年度に提案した樹木の日射遮蔽モデルを用いて、都市緑化の設計に役立っ知見を得るために、以下の2カ所の実在市街地において、樹種や樹木の配置が異なる様々な都市緑化について、樹木の日射遮蔽効果を比較した。 1)北と東側を高層ビル群に囲まれた公開空地における夏季と冬季の樹木による生活空間の日射調整効果を、樹高10m程度の樹冠形状と日射透過率が異なる高木落葉樹であるイチョウ、ケヤキ、モミジバフウ、プラタナス、サクラで比較した。評価は、地上高さ1.5mにおける平均放射温度と紫外放射スカラー照度を用いた。その結果、夏季の日射遮蔽, 冬季の日射取得, 夏季の紫外放射の遮蔽のそれぞれで有利となる樹種が異なり, 樹木の日射遮蔽効果を多面的に捉えながら樹種を検討する必要性を示した。 2)歩行者天国となる南西から北東へ伸びる街路空間を対象に、配植が異なる16ケースで樹木による夏季日中の紫外放射遮蔽効果を、地上高さ1.5mにおける紫外放射スカラー照度と、人体を想定した微小六面体の各面が受ける紫外放射量で比較した。その結果、太陽高度が高い時間帯は、微小六面体の上面を効果的に遮蔽する大きな樹冠が最も有効であった。その一方で太陽高度が低い時間帯は、建物壁面からの反射が影響するため、微小六面体の鉛直面への遮蔽効果が高い多層植栽が有効であり、街路樹の形態と反射面との位置により、配植や樹冠形状を検討する必要性を定量的に示した。 今後, これらの成果を基に実務での緑化設計支援に向けた樹木モデルのデータベース作成に取り組む予定である。
|