研究課題
植物と病原菌は、自身の存続をかけた攻防により共進化してきた。その中で、植物はより強固で複雑な病害抵抗性のシステムを獲得してきた。一方、植物病原菌はエフェクターと呼ばれるタンパク質を植物細胞内に注入し抵抗反応を抑制することで、感染を成立させている。これまでに卵菌であるべと病菌(Hyaloperonospora arabidopsidis ; Hpa)において植物の抵抗反応を抑制しうる推定のエフェクターが多数同定されており、その内宿主植物細胞内において核に局在するエフェクターに注目している。植物の病害抵抗性において重要な役割を果たすサリチル酸の応答遺伝子であるPR-1遺伝子の発現を組織化学的に評価したところ、Hpaが感染している細胞において特異的にPR-1の発現が抑制されていた。それによりHpaエフェクターがサリチル酸経路を抑制している可能性が考えられた。HaRxL44エフェクターはHpa接種3日後においてその発現が強く誘導され、Hpa接種3日後のシロイヌナズナおよびHaRxL44高発現シロイヌナズナにおいてジャスモン酸応答遺伝子の発現変動が見られた。また、HaRxL44は転写制御に関わるMediator複合体のsubunitであるMed19aと相互作用し、Med19aの分解を促進することを明らかとした。med19a欠損変異株はHaRxL44高発現シロイヌナズナと同様に恒常的なジャスモン酸応答様の遺伝子発現変動が見られた。ジャスモン酸はサリチル酸と拮抗的に働くことが知られていることから、HaRxL44高発現シロイヌナズナおよびmed19a欠損変異株におけるPR-1遺伝子発現変動を調べたところ、いずれにおいてもPR-1の顕著な発現減少が観察された。以上のことから、HaRxL44はMed19aを標的とすることで、サリチル酸応答を抑制し感染を優位に進めていることを明らかとした。
(抄録なし)
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PLoS Biology
巻: 11 ページ: e1001732
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