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2012 年度 実績報告書

高強度超短パルスレーザーにより誘起される電子格子ダイナミクスの第一原理計算

研究課題

研究課題/領域番号 12J02342
研究機関筑波大学

研究代表者

篠原 康  筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード第一原理計算 / コヒーレントフォノン
研究概要

固体Sbに対して、これまで開発してきた理論的枠組みを適用し、同物質におけるコヒーレントフォノン生成過程を明らかにした。また、固体Siに対してコヒーレントフォノンの観測メカニズムの側からアプローチを行い、同現象に付随した格子振動の振幅について明らかにした。
これまでに固体Siのコヒーレントフォノン生成を明らかにするために開発した理論的枠組みを固体Sbにも適用して、その生成メカニズムを明らかにした。特に格子に働く力に対して、照射電場の偏向依存性から生成メカニズムがRaman散乱の選択即に従っていることを示し、照射電場の振動数依存性を調べた。
この振動数依存性に対しては現象論的な理論に基づく先行研究により、格子に働く力と誘電関数の虚部が比例関係にあることが示唆されており、本研究により特定のモードの格子振動に対してはそのような関係が見て取れることが分かった。これはその先行研究の妥当性を示しているとともに、必ずしもすべての格子振動に対して期待される関係が成り立たないことを示した。また、固体Siにおいてはコヒーレントフォノンの生成機構はボンドの向きと電場の偏向の関係から簡便に理解できる事がわかっていたが、固体Sbのコヒーレントフォノンもまた同様の考察でその生成機構が理解できることを本研究により確認した。さらに、d軌道を入れた固体Sbの予備的な計算を進め、その影響を調べる準備を行った。
固体Siを対象に、格子が平衡点からずれた際の誘電関数変化を評価することにより、特にRaman散乱が関与するコヒーレントフォノンの観測機構に関連したRaman感受率の評価を行った。Raman感受率を評価することで、コヒーレントフォノンの観測を行う際にその存在の傍証となる反射率変化の振幅を見積もることが出来る。実験的に得られている反射率変化と、本研究で計算した反射率変化から、コヒーレントフォノンの格子振動の振幅を見積もった。その結果はこれまでに行ってきた同物質のコヒーレントフォノンの生成機構のシミュレーションから得た値と無矛盾な範囲で一致をみることが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初は固体Sbにおけるd軌道の計算を進めているはずであったが、想定したよりも計算の収束性への条件が厳しく、かつ計算資源が混んでいたために、数値計算を十分に進めることが出来なかった。この影響を直接受ける予備計算の分やや計画が繰り遅れている。しかしその他の計算の準備状況は当初の計画の通りに進めることが出来たため、全体としてはおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

固体Sbのd軌道を考慮することによる影響の考察と、極性半導体への本研究で開発した枠組みの適用を行う。
また、実験家との議論により、多面的に現象の理解を進める。
固体Sbのd軌道を入れた場合と、より多様な生成機構を持つと考えられている極性半導体に対して、本研究の理論的枠組みを適用し、特にRaman散乱以外によるコヒーレントフォノン生成のメカニズムを第一原理的に明らかにする。また、本研究の結果を実験結果と突き合わせるうえで、詳細な実験条件と合わせて議論をするべきことが明らかになってきた。実験の前提条件や、試料による個体差なども含めて実験家と議論をすることで、コヒーレントフォノンの生成、および観測メカニズムを明らかにする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Nonadiabatic generation of coherent phonons2012

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Shinohara
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Physics

      巻: 137 ページ: 22A527-1,22A527-8

    • DOI

      10.1063/1.4739844

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 第一原理計算で探るコヒーレントフォノンの生成機構2012

    • 著者名/発表者名
      篠原 康
    • 雑誌名

      日本物理学会誌

      巻: 67 ページ: 685,689

    • 査読あり
  • [学会発表] ラマン感受率の第一原理計算とコヒーレントフォノン振幅の評価2013

    • 著者名/発表者名
      篠原 康
    • 学会等名
      日本物理学会68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学
    • 年月日
      2013-03-29
  • [学会発表] Real-Time TDDFT simulation for coherent phonon generation in crystalline solids2013

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Shinohara
    • 学会等名
      APS march meeting 2013
    • 発表場所
      Baltimore, USA
    • 年月日
      2013-03-19
  • [学会発表] First-principles calculation for coherent phonon generation in solids2012

    • 著者名/発表者名
      篠原 康
    • 学会等名
      テラヘルツ分光法の最先端-ここまできたテラヘルツ時間領域分光-
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      2012-10-25
  • [学会発表] First principles calculation for electron-phonon dynamics in crystals under ultrashort laser pulses2012

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Shinohara
    • 学会等名
      ISC-QSD
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2012-10-12
  • [学会発表] 時間依存密度汎関数理諭による半金属コヒーレントフォノン生成の振動数依存性の分析2012

    • 著者名/発表者名
      篠原 康
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      横浜国立大学
    • 年月日
      2012-09-19
  • [学会発表] 第一原理計算による半金属コヒーレントフォノン生成の振動数依存性の分析2012

    • 著者名/発表者名
      篠原 康
    • 学会等名
      第73回応用物理学会学術講演会
    • 発表場所
      愛媛大学・松山大学
    • 年月日
      2012-09-13
  • [学会発表] シフト線型方程式のクリロフ部分空開法のスカラー化とその時間依存密度汎関数理諭への応用2012

    • 著者名/発表者名
      篠原 康
    • 学会等名
      日本応用数理学会2012年度年会
    • 発表場所
      稚内全日空ホテル
    • 年月日
      2012-08-30
  • [学会発表] Coherent phonon generation in time-dependent density-functional theory2012

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Shinohara
    • 学会等名
      Material Simulation in Petaflops era
    • 発表場所
      東京大学物性研究所
    • 年月日
      2012-07-12
  • [学会発表] First-principles calculation for coherent phonon generation in solids2012

    • 著者名/発表者名
      Yasushi Shinohara
    • 学会等名
      International conference on Laser Probing
    • 発表場所
      Paris, France
    • 年月日
      2012-06-05

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公開日: 2014-07-16  

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