研究課題/領域番号 |
12J02352
|
研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
関谷 敦志 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | パルミトイル化 / 翻訳後修飾 / 脱パルミトイル化酵素 / 膜マイクロドメイン / Ras / タンパク質膜輸送 |
研究概要 |
タンパク質の脂質修飾はタンパク質の局在を決定し、その機能を制御する翻訳後修飾の総称であり、中でもパルミトイル化は唯一可逆的に制御された脂質修飾である。リン酸化/脱リン酸化に代表される可逆的な翻訳後修飾の制御機構は、刺激に応答したタンパク質の機能のオン/オフを決定するため、生物学的に非常に重要な意義を有している。しかしながら、タンパク質のパルミトイル化/脱パルミトイル化の可逆的制御は古くからその存在は認識されていたものの、修飾/脱修飾を担う責任酵素が同定されていないため、その解明はリン酸化に比べ大きく遅れをとっている。近年、遺伝学的手法からパルミトイル化を担う酵素群(DHHCファミ リー)が同定され当該分野の発展に大きく寄与したものの、反対側である脱修飾酵素は未だ同定されておらず、可逆的修飾サイクルの全容解明には至れていない。生体膜のさまざまな機能を制御する膜マイクロドメインの形成機構にはパルミトイル化修飾サイクルが重要であり、脱修飾酵素の同定が望まれている。そこで本年度は、近年の多方面からの発展的研究結果を踏まえ、脱パルミトイル修飾酵素の包括的な探索を過剰発現系を用いた生化学実験によりおこなった。まず基質タンパク質として癌遺伝子Hrasを選択した。その結果、共通のドメイン構造を有する機能未知の新規タンパク質群がHrasに対して脱パルミトイル化活性を示すことを見出した。これら同定した酵素群は他のパルミトイル化基質に対しても活性を示し、また各酵素間で基質特異性を示すことを明らかにした。一方でsiRNAによるノックダウン実験ではHrasのパルミトイル化サイクルが有意に遅延することを明らかにした(関谷ら投稿準備中)。現在申請者は同定した脱パルミトイル化酵素群の生理的意義の解明に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1970年代後半に存在が明らかになった可逆的なパルミトイル化修飾サイクルは30年以上、サイクルを担う酵素群が同定されていない。本年度申請者はこれら酵素群の同定に成功し、今後の当該分野の発展に大きく貢献できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今回申請者が発見した脱パルミトイル修飾酵素群の機能解析を中心に進め、パルミトイル化修飾サイクルと膜マイクロドメイン形成メカニズムの相関関係をプロテオミクスの手法から明らかにしていきたい。また、これら新規酵素群の個体レベルでの生理機能の解明にも着手する。
|